復活した『ブランドで競争する技術』の入門編の短期連載。変化の激しい日本で、ブランドを使いながら、どうお金儲けをしていくかをお話しています。再開第3回は、「フロー型」から「ストック型」にビジネスを変えるための発想転換について。

「投資」と「原価」の違い、わかりますか?

 なかなか儲からない(事業が損益分岐点を超えない、黒字化しない)原因は、事業の構造がストック型でなく、(無理な)フロー型になっているからであるという説明をしてきました。その原因は、重くのしかかった経費と、ますます低価格化が進む構造の矛盾にあります。世の中が変わっているのに、対策が追いついていないのです。

 実際に、これ以上顧客が増えない状況であるにもかかわらず、膨大な広告宣伝費を使って、擬似的に顧客を呼び込み、顧客が必要としていない商品を売りつけることで一時的な売上を上げようとする担当者が驚くほど多いのです。これが前回、栄養ドリンクを飲み続け、体にむち打って働いているのと同じ、と申し上げた話です。それではどうしたらよいのでしょうか。

 まず「投資」と「原価」の違いについて、しっかり押さえておきましょう。ここでご紹介する考え方は、一般的な会計原則とはやや異なりますが、非常に大事なポイントですのでしっかり理解してください。

 まず、投資というのは、一時的にお金の支出が発生しても、その結果なにかしら将来にお金が返ってくることを期待でき、また、うまくいけば投資した以上のお金が返ってくることと定義します。一方、原価というのは、特に特別な狙いはなく、事業が通常の状態で流れているとき恒常的に発生する支出、つまり、売上をつくるためには欠くことのできない支出であると定義します。

 いわば、「投資」は幸せの青い鳥、「原価」は縁の下の力持ちという感じでしょうか。表現は適切でないかもしれませんが(笑)。

 ここで、企業の広告宣伝費はどうなるのかを考えてみましょう。正しい広告宣伝費は「投資」として投下されます。つまり、目的を持って広告宣伝費を使うのですが、目的が達成できれば広告による支出は少なくなり、いずれ宣伝効果による収入が支出を超えていきます。一方、悪しき広告宣伝費は、まるで原価のように事業に居座り続け、事業を維持するために、やめることができない状況になっているのです。

 では、みなさんの会社の広告宣伝費は投資ですか、それとも原価ですか?