フェイスブックの衰退は
すでに始まっている

 こうしてフェイスブックへの規制が強化される可能性は高まってきたが、問題はそれが同社の衰退に拍車を掛けるかどうかである。

 2021年10月4日のニューヨーク・タイムズ紙によれば、フェイスブックの株価は2020年を通して強力な広告収入と新型コロナウイルスのパンデミック下での一部の製品の売り上げ急増などで30%近く上昇したという。

 一見すると、同社の業績は好調だが、実はライバル企業との競争激化やイノベーションの停滞などで、アクティブユーザーの数は米国やカナダで減少しており、今後は減速するとみられている。

 特に懸念されているのは若いユーザーの減少だ。前出の記事によると、フェイスブックのティーンエージャーの使用は最近減少し、内部の研究調査では、2023年までにさらに43%減少するとの予測が出ている。主な理由は、Tik Tokなどのライバル企業に市場シェアを奪われていることだという。

 二つ目の懸念材料は、米国の成人の間でフェイスブックに対する好感度が低下し、逆に反感度が高まっていることだ。

 グローバルなデータ調査会社「モーニング・コンサルタント」が行った調査では、フェイスブックに好意的な見方をしている人の割合は2016年10月17日の時点で69%だったが、2021年10月4日には55%に減少。逆に否定的な見方をしている人の割合は同じ期間内で、26%から35%に上昇している。

 フェイスブックは今回の内部告発だけでなく、過去にも2016年の米大統領選における政治的な誤情報の拡散や、2018年3月に発覚したフェイスブックのユーザーデータの一部が英国系企業「ケンブリッジ・アナリティカ」を通してトランプ前大統領の選挙陣営に政治的に利用された事件など、数々の不祥事への関与が指摘されている。

 モーニング・コンサルタントは、これら度重なる不祥事が好感度の低下につながっているのではないかとみている。

 このようにフェイスブックが衰退の兆候を見せ始めたところで、新たな連邦政府による規制強化が行われれば、同社の衰退に拍車を掛ける可能性はある。

 前述のニューヨーク・タイムズ紙の記事を書いたテクノロジー・コラムニストのケビン・ルース氏は、「フェイスブックは我々が知っている以上に弱い」とし、「“フェイスブックは死んだ”と宣言するのは時期尚早だが、ゆっくりと着実に衰退は進んでいる」と述べている。

(ジャーナリスト 矢部 武)