嘉田由紀子滋賀県知事は27日「日本未来の党」の結成を宣言した。これによって選挙構図は一変し、今回の総選挙に大きな明るい展望が開けてきた。おそらくこの動きは総選挙の台風の目になるに違いない。本欄で私が出現を待望してきた“ミスターX”は嘉田知事になのかもしれない。

 これで第三極は2つの勢力が揃い、その進撃の相乗効果によって総選挙で自民、民主両党を追いつめていくことになる。ひょっとすると自民と民主の対戦は、二軍戦のようになってしまう可能性もある。

 そもそも第三極への待望論が強まったのは、民主党政権が、税金の無駄遣いを放置して消費税増税に走ったことに根因がある。これに対する怒りは衆議院議員40人削減や公務員宿舎の半減などの小手先の偽造手法で収まる規模のものではない。

 この第三極の流れをさらに大震災後の原発政策への強い不信感が、必死に後押しすることになった。

 だからこれら2点をあいまいにすれば、第三極の政党はたちまち失速する運命にある。

 嘉田知事は、今のところ知事を辞めて国政の場に出ることを否定している。しかし、ここで衆院選に出馬しても多くの人が理解し、歓迎するだろう。むしろ「卒原発」を貫くならそのほうがよぼど筋が通っている。嘉田氏の英断を期待するところだ。

 小沢一郎氏にとってもこれで“最後の御奉公”の道が開けたことになる。彼もこの際は大きな成果を得るために一歩も二歩も引くだろう。

 嘉田氏を中心とした第三極Bはリベラル勢力の結集と言われるだろう。心配されるのは日本の〝国家主権“について強い認識を持っているかどうかである。この点では保守を自認する「みどりの風」の支えが必要になる。尖閣問題のような他国による日本の主権侵害の事態には、毅然として対応する決意を示してほしい。

 人権運動も環境運動もそうだが、そもそも市民運動はインターナショナルな政治運動だ。国境というものをあまり認識しない。しかし現実の世界は主権国家がしのぎを削っている。日本未来の党の指導者に対しては、この点に不安を持つ人も少なくない。「みどりの風」はそれを補う重要な役割が期待される。