まだある!飲食店で使われる
隠語の数々

 飲食店で使われる「あたる」とは、鍋で煮物やソースを作るときに食材を焦がすことだ。「あたらないように、入れたらすぐにかき混ぜて」などと言う。この言葉は、「火があたる」からきている。

 飲食店の天敵、虫を表す隠語もある。例えば「太郎」はゴキブリ(害虫)のことだ。「本日、太郎さんがご来店されました」と、丁寧に言うこともある。「G」という店や、小さいのを指して「花子」という店もあるようだ。

 従業員がトイレに行く際に隠語を使うこともある。某有名ラーメンチェーンの本店では、1階が店舗、2階が仕込みキッチン、3階が従業員休憩スペースになっている。この店舗では、「3階に行ってきます」は、トイレに行くことを意味する。

「○番行ってきます」は、従業員がトイレに行くことを表す場合が多いようだ。特に「4番」が使われている。4は「死」を連想させるため、縁起の悪い数字とされ、飲食店のテーブルや席番号では振られない番号だからだ。

 ある高級フランス料理店では、4番テーブルがなかった。数字の4が「死」を意味するのは日本ならではのことなので、シェフが修行したフランスの店には4番テーブルはあったのだろうが、自分の店では縁起を担いだということのようだ。

会計時に客が「お愛想」と
言ってはいけないワケ

 飲食店での最後の会話、お会計時のやりとりにも隠語がある。「お愛想」だ。

「お愛想」という言い方は、遊郭のお会計に由来しているという説がある。「お楽しみのところ、お愛想尽かしでございますが」と、店の番頭などが勘定書きを客に差し出していた。それを寿司屋の旦那衆が、隠語として採用したというのだ。

 反対に客側が「お愛想」と言ってしまうと、「このお店に愛想が尽きたから、もう来ない」の意味合いになってしまうことになる。

 店内の隠語は、あくまでも職人(従業員)同士、仲間内でのみ通用する合言葉であり、客にはわかってほしくないものだ。しかし、ドラマやインターネットなどの影響で、今では多くの隠語が一般に知れわたっている。

 もしも皆さんが、従業員に「お愛想」と言ってお会計を頼んでいたのであれば、「こいつ、わかってないな」と思われかねない。

 隠語や合言葉は、客側が通を気取ってむやみに使うべきではない。何度来店しても敬意を払われず、上顧客として扱われないかもしれない。

 隠語を知っていると、ついお店で言ってみたくなってしまうだろう。しかし、隠語とは、使い方を誤ると、教養がない残念な人とみなされかねない危険な言葉であるということを、ぜひ胸にとどめておいていただきたい。