ミクシィのノウハウが
FC東京回復のカギ

 20年度の営業収益を見れば、横浜F・マリノスの58億6400万円がトップだった。マリノスの他に50億円を超えたのは、57億7100万円の浦和レッズ、54億4500万円の川崎フロンターレ、52億3600万円の名古屋グランパスとなっている。

 45億8800万円で8位だったFC東京としては、営業収益を50億円台へ再び到達させることがマイルストーンとなる。そのためにも必須な入場料収入の回復へ、木村社長はミクシィだけが持ち合わせるノウハウが武器になると記者会見で力を込めた。

「これまで培ってきたコミュニケーションのノウハウであるとか、あるいはITのテクノロジーといったものを最大限に生かしながら、コミュニケーションとしてのスポーツのポテンシャルをさらに引き出すことができるのではないかと考えている」

 具体的には、これまでもマーケティングパートナーとして取り組んできた、クラブのエンタメ化やDX(デジタルトランスフォーメーション)をさらに加速。スタジアム体験を向上させるとともに、できる限り多くの都民にFC東京のサッカーを届けていく。

 すでに手がけているライブビューイング事業や、関連会社のイギリス風パブ「HUB」とも連携して、スタジアム以外でFC東京と触れる機会も創出。他の株主の総意を得た上で特定企業、すなわちミクシィの特色を前面に押し出す施策を講じていく。

 出資団体に名を連ねる三鷹、府中、調布、小平、西東京、小金井の6市との関係をより緊密にした上で、ミクシィが本社を置く渋谷区を含めた都心エリアにも訴求していく。それだけのポテンシャルが、首都・東京にはまだ眠っていると木村社長は言う。

「東京には人口1400万人のボリュームがある。しかも、年少人口は他県ほど減っていない。未来の担い手である若年層が集まり、休むことなく成長を続ける都市だからこそ、さらに大きな可能性を見いだせるのではないか」

 メルカリは鹿島アントラーズ、サイバーエージェントはFC町田ゼルビア、DeNAはSC相模原へと、大手IT企業のサッカー界への参入が続いている。特に鹿島の小泉文明社長がミクシィのCFO(最高財務責任者)だった縁にも触れながら、木村社長は「これは偶然のところも、あるいは必然性もあるかもしれない」と語り、こう続けた。

「単純にサッカーが好きなのは共通している。ただ、上場企業である以上は、好きだからやれるわけでもない。テクノロジーを生かしていかに成長させられるか。あるいはシナジーを示せるか。そうした説明が株主に対して必須となる中で、まだまだ伸ばしていけるポテンシャルがIT企業ならばあった、と。そこも共通していると思っている」

 株式引受実行日の来年2月1日を待つことなく、スポーツ事業を次なる柱にすえるミクシィが先頭に立った新生FC東京は、スローガンとして掲げた「強く、愛されるチーム」を目指して、さまざまな構想を具現化させる作業を進めていく。