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相川俊英の地方自治“腰砕け”通信記

熊本県で勃発した自治体の離婚泥沼化騒動
合併相手からの“離縁状”に揺れる菊池市

相川俊英 [ジャーナリスト]
【第58回】 2012年12月11日
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どんなに別れたくても別れられない
平成の大合併で結婚した自治体のその後

 結婚よりも離婚する方が大変だとよく言われる。夢破れて関係を解消するのだから、それも当然だ。互いの感情がもつれにもつれ、底なし沼にはまり込んでしまうケースも少なくない。ドロドロの離婚劇にまで発展するのは、何も芸能人カップルに限らない。

 それでも人間同士ならば、忍耐と努力を重ねれば離婚への道は切り開ける。リセットは可能である。しかし、どんなに別れたくても事実上別れられないものもある。合併した自治体間の関係だ。

 国が主導した「平成の大合併」により、1999年3月末時点で3232あった市町村は、現在、1719にまで減少した。それほど自治体の合併が各地で進行した。全国に自治体のカップルが多数、誕生したのである。

 その全てのカップルが幸せな新婚生活を送っているとは到底思えないが、仲違いがエスカレートして合併の解消(離婚)に至ったという事例は、1つもない。別居や家庭内離婚といったような現象も、それほど表面化していない。

 市町村合併(結婚)したものの、相手とどうにも性格が合わない。相手の実像が合併前に聞いていた話と違いすぎ、騙された感が拭えない。こうした理由などから「我慢の限界だ」と離別を切望しても、合併自治体からの分離独立は不可能に近いからだ。

 制度の上では、合併を破談にして元の自治体に戻る道はある。地方公共団体の法人格の変動をもたらす区域の変更、いわゆる「廃置分合」だ。要するに、合併自治体からの分離独立である。しかし、それは合併とは比べものにならないほど険しい難路となっている。

 そもそも一部の地域だけが元の自治体から分離独立するには、その自治体の議会と都道府県議会の議決がいる。過半数以上の賛成という高い壁が立ち塞がり、結局「こんなはずではなかった」「騙された」といった不満を抱えながらも、独立運動にまで発展しないのが通常だ。

 「いつまでも不平不満をこぼすのではなく、新しい町づくりに気持ちを切り換えよう」と、自らを納得させるしかないのだ。つまり、諦めるしかないのである。

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相川俊英 [ジャーナリスト]

1956年群馬県生まれ。放送記者を経て、1992年にフリージャーナリストに。地方自治体の取材で全国を歩き回る。97年から『週刊ダイヤモンド』委嘱記者となり、99年からテレビの報道番組『サンデープロジェクト』の特集担当レポーター。主な著書に『長野オリンピック騒動記』など。


相川俊英の地方自治“腰砕け”通信記

国政の混乱が極まるなか、事態打開の切り札として期待される「地方分権」。だが、肝心の地方自治の最前線は、ボイコット市長や勘違い知事の暴走、貴族化する議員など、お寒いエピソードのオンパレードだ。これでは地方発日本再生も夢のまた夢。ベテラン・ジャーナリストが警鐘を鳴らす!

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