同会は、ひきこもる本人を外に連れ出す「引き出し屋」の手法が、主にテレビ番組で「ひきこもり解決策」であるかのように流布されたことを問題視。ひきこもる人たちの人権侵害につながる誤った支援を助長する上、救われると思った親たちも次々に高額料金を取られるなどの被害に遭っていることに危機感を覚えたという。

「あるテレビ番組では、本人が風呂場で入浴中にカメラが突然入ってきて撮影し、長時間にわたり説得。偏見を助長させるようなナレーションや効果音で演出まで加えていました。人権侵害だと感じたので局に公開質問状を出しましたが、質問に対する答えはなく、僕たちは無力さを感じたんです」(同会メンバーの木村ナオヒロさん)

 ひきこもり人権宣言を作成した目的は、社会の認識を少しでも変えることだ。ひきこもる行為は、人に頼ることなく自分の人生を背負った状態であり、ひきこもる個人や家族に変化を求めるのではなく、それぞれが幸福を求めて周囲に頼ることができるように、という思いが込められている。

引き出し屋被害者が証言
あれは「福祉施設」ではない

 同宣言は、ひきこもる人の生活の質を保障する「生存権」をはじめ、誰もがひきこもる権利を行使できる「自由権」、他者から目標を強制されずに自己決定できる「幸福追求権」などの7条にわたる条文と、3万5000字に及ぶ解説文で構成されている。

 作成に協力した引き出し屋被害者のAさんは、母親の依頼を受けた業者に自室から連れ出されて施設に監禁状態に置かれた。その後、食事を受け付けなくなって病院に緊急搬送され、一時は命も危ぶまれたという。

「厚生労働省の担当者との意見交換の場で言われたのが、民間支援業者の自由な活動を妨げることはできない、という言葉でした。支援する側の自由は保障されるのに、支援される側には、殺されるようなことがあっても自由はないのか?と思いました」(Aさん)

 そんな業者が用意した施設内の生活によって“瀕死”状態にあったわが子を救出したAさんの父親は、自らが役所の福祉部署に勤務していた経験から次のように疑問を投げかける。