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田中秀明の予算の政治経済学入門

予算編成のゲーム:なぜ財政赤字は拡大し
無駄な予算を排除できないのか

田中秀明 [明治大学公共政策大学院教授]
【第2回】 2012年12月12日
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前回は、予算編成の基本的な流れや予算の構造を説明したが、それはあくまでも表面的な仕組みを述べたに過ぎない。予算の本質は、限りある資源を巡って関係者が争うゲームである。誰かがより多くの予算を獲得すれば、誰かの予算は少なくなる。ゼロサム・ゲームである。誰かの予算を増やし誰かの予算を減らす調整こそが、政治の役割である。

予算を削減しようとすれば、当然ながら反発が生じるので、誰かがそれを説得しなければならない。予算とは、突き詰めれば、資源配分を巡る政治的な調整過程といえる。しかし、それは難しい。特に日本のように、首相が指導力を発揮できない国ではなおさらである。調整できないことが、結果として、巨額な財政赤字をもたらしている。連載の第2回は、予算編成のゲームの特徴と問題を議論し、財政赤字が拡大する要因を明らかにする。

予算とは「他人のお金を使う」仕組み

 そもそも政府部門には、財政赤字を拡大させる要因が内在している。

 具体例で説明しよう。これから年末になり忘年会シーズンが来る。例えば、10人の同僚で忘年会をする場合を考える。もし、その中に太っ腹な人がいて、「何でもいいからおごる」と言ったら、ふつうは、値段の高い店に行くだろう。自分がお金を払うわけではないからだ。しかし、自分で払うなら、お財布と相談してお店を決める。予算制約があるからだ。

 端的にいって、政府部門の予算というのは、「他人のお金を使う」仕組みである。徴税部門は別であり、各省は自分で税金を集めるわけではない。自分でお金を集めずに使うだけなら、どんどん使おうというインセンティブが働く。英語では各省大臣のことを“spending minister”という。公共サービスを受け取る国民にも、同じことがいえる。公共サービスを提供するために必要な費用の全額を国民が負担するわけではないからだ。例えば、一般道路や治安維持に係る費用は、国民がその便益の対価として直接支払うわけではない。もちろん、国民は消費税や所得税などを通じて負担をするが、それは、一般道路の建設に、直接結びついているわけではない。

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田中秀明[明治大学公共政策大学院教授]

たなか・ひであき
1960年生まれ。1985年、東京工業大学大学院修了(工学修士)後、大蔵省(現財務省)入省。内閣府、外務省、オーストラリア国立大学、一橋大学などを経て、2012年4月から現職。ロンドン・スクール・オブ・エコノミクス修士、政策研究大学院大学博士。専門は予算・会計制度、公共政策・社会保障政策。著書に『財政規律と予算制度改革』(2011年・日本評論社)、『日本の財政』(2013年・中公新書)


田中秀明の予算の政治経済学入門

日本政府の抱える借金は、何とGDPの約2倍に達する。財政再建は待ったなしと、これまでに何度もトライされてきた。だが、いずれもうまくゆかず借金は膨らむばかりだ。なぜ、財政再建はとん挫するのか。財務省出身で、気鋭の財政学者が、予算策定から決算至る予算の一生に分け入り、制度・仕組みの問題点を指摘し、無駄をなくし、効率的な予算を実現するため方策を提言する。

「田中秀明の予算の政治経済学入門」

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