ダイヤモンド社刊
2310円(税込)

「昨日を捨てることなくして、明日をつくることはできない。しかも昨日を守ることは、難しく、手間がかかる。組織の中でも貴重な資源、特に優れた人材を縛りつけられる」(『明日を支配するもの』)

 ドラッカーは、1980年代半ば以降、少なくとも企業の世界では、変化への抵抗という問題はなくなったという。内部に変化への抵抗があったのでは、組織そのものが立ち枯れとなる。かくして、変化できなければつぶれるしかないことは、ようやく納得された。

 しかし、変化が不可避といっても、それだけでは死や税のように避けることができないというにすぎない。できるだけ延ばすべきものであり、なければないに越したことはないというにとどまる。

 変化が不可避であるのならば、自ら変化しなければならない。変化の先頭に立たなければならない。変化をコントロールできるのは、自らがその変化の先頭に立ったときだけである。特に、急激な変化の時代に生き残れるのは、変化の担い手、すなわちチェンジ・リーダーとなる者だけである。

 当然、チェンジ・リーダーたるための条件が廃棄である。成果が上がらなくなったものや貢献できなくなったものに投下している資源を引き揚げなければならない。

 チェンジ・リーダーたるためには、あらゆる製品、サービス、プロセス、市場、流通チャネル、顧客、最終用途を点検する必要がある。しかも、常時点検し、次々に廃棄していかなければならない。

 第一に、製品、サービス、プロセス、市場、流通チャネル、顧客、最終用途の寿命が、「まだ数年はある」といわれるようになった状況では、廃棄が正しい行動である。

 第二に、製品、サービス、プロセス、市場が、「償却ずみ」を理由として維持される状況に至ったならば、廃棄が正しい行動である。

 第三に、製品、サービス、プロセス、市場が、これからの製品、サービス、プロセス、市場を「邪魔する」ようになったならば、廃棄が正しい行動である。

 「イノベーションはもちろん、新しいものはすべて、予期せぬ困難にぶつかる。そのとき、能力ある人材のリーダーシップを必要とする。すぐれた人材を昨日に縛りつけていたのでは、彼らに活躍させることはできない」(『明日を支配するもの』)