これに対し丸井は、06年にそれまでの成長の核であった「赤いカード」を停止、VISAと提携し、他店でも使える「エポスカード」に転換した。これによって金融事業の中心を、キャッシングからショッピングへと転換した。

丸井の新しいビジネスモデル「売らない店」は、なぜ売れているのか

 しかし、当時の丸井の損益分岐点は90%に達しており、従来の百貨店の「仕入販売型」では、売り上げの減少に耐えられない状況になっていた。そこで丸井は、場所を貸して家賃を得る「賃貸借型」に転換した。

 しかし「賃貸借型」は新たな問題を生んだ。それはテナントの売り上げが増えても、丸井の収益には結び付かないことであった。そこで丸井が出した答えが、「売らない店」であった。

 これまでECだけで販売してきた新興企業(以下、エマージングECショップと略す)に丸井に出店してもらい、「売らない店」を増やす戦略である。

「FABRIC TOKYO」「b8ta」に見る
売らない店の成功事例

 ここでは、売らない店の具体例を2つ紹介しよう。

 オーダーメイドスーツを手掛けるD to Cブラント「FABRIC TOKYO」は、これまでECサイトのみで販売していた。そして彼らは、丸井に「売らない店」を出店した。店頭では採寸や顧客とのコミュニケーションが主で、販売は行わない。そのため顧客は、購買のプレッシャーを感じずに、自由にスーツなどを試すことができる。販売は、その後にECサイト上で行う。

 丸井と同社は19年に資本提携も行い、エポスカードのみ期間限定での割引キャンペーンなども行っている。

 また、コスメ、食品、アパレル、雑貨などを展開する「b8ta」も、エマージングECショップの1つであるが、丸井の店頭で商品を「体験」することをウリにしている。販売はECサイトで行い、同社も丸井と資本提携している。