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岸博幸のクリエイティブ国富論
【第211回】 2012年12月28日
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岸 博幸 [慶應義塾大学大学院メディアデザイン研究科教授]

安倍政権の経済政策の司令塔は機能するか?

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 安倍政権が発足し、経済政策に関しては経済財政諮問会議と日本経済再生本部の2つが司令塔の役割を果たすことになりました。2つの司令塔がうまく機能して、安倍政権は日本経済をデフレと低成長から脱却させることができるでしょうか。ぜひ頑張ってほしいですが、現状では疑問符を付けざるを得ません。

官僚主導の運営体制

 その理由は、この2つの司令塔の運営が官僚主導、とりわけ経産省主導になる可能性が高いと考えられるからです。

 まず、この2つの司令塔がどういう経緯で誕生となったかを振り返ってみましょう。総選挙での自民党の政権公約には霞ヶ関の各省庁からの入れ知恵がたくさん入っていましたが、そこに経産省の発案である経済再生本部の設置が明記されていました。

 つまり、元々は経済再生本部だけが司令塔だったのです。ところが、選挙後の会見で安倍首相が諮問会議の再始動を明言したので、諮問会議も司令塔に加わることになりました。

 それは、官僚にとっては嫌なことだったはずです。全閣僚がメンバーの経済再生本部ならば官僚主導で運営できるのに対して、諮問会議が小泉時代のように運営されたら政治主導で政策決定されてしまうからです。

 そうした官僚の発想が影響してでしょう、報道を見る限り、諮問会議と経済再生本部の合同会議が開催されることが増えそうですが、そうなったら政策は本当に官僚主導になります。全閣僚と有識者が参加する大規模な会議になれば、少数の閣僚と有識者という諮問会議の色彩は薄れ、経済再生本部の色彩が強くなるからです。

 かつ、両方の司令塔を司るのは商工族で経産省に対して非常に理解ある政治家である甘利大臣になりました。甘利大臣の事務秘書官には経産省の官僚が着任しています。

 加えて言えば、かつての諮問会議の事務局は内閣府に置かれ、事務局メンバーの大半を内閣府のエコノミスト集団が担っていましたが、今回は新たに両方の司令塔の共通の事務局を内閣官房に置くことになったので、この事務局は各省庁からの出向者の寄り合い所帯になります。そうなると、事務局では各省庁からの出向者が自分の役所の利害を露骨に主張することになるでしょう。

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岸 博幸 [慶應義塾大学大学院メディアデザイン研究科教授]

1986年通商産業省(現経済産業省)入省。1992年コロンビア大学ビジネススクールでMBAを取得後、通産省に復職。内閣官房IT担当室などを経て竹中平蔵大臣の秘書官に就任。不良債権処理、郵政民営化、通信・放送改革など構造改革の立案・実行に関わる。2004年から慶応大学助教授を兼任。2006年、経産省退職。2007年から現職。現在はエイベックス非常勤取締役を兼任。


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