在上海日本総領事・大使が上海副市長に送ったレターが話題に

 しかし、いくらこうした住民同士の救済行動が感動的であっても、国際都市・上海のロックダウンという現状の厳しさを変えることはできない。経済活動も日常生活も速やかに正常化を取り戻すことこそ王道だ。

 そんな中、赤松秀一・在上海日本総領事・大使が4月15日、宗明・上海市副市長などへ送ったレターが日中関係者のなかで話題を集めた。

 このレターは、上海に拠点を持つ1万1000社もある日本企業の悲鳴を伝え、いつまでロックダウンが続くかわからないために顧客への納期の説明が出来ず事業計画も立てられないこと、製品の生産・納入が出来ないために他地域の同業他社に販路を奪われ始めていること、これに伴い生産を他地域や中国国外へ振り替え始めていること等々、広範にわたって深刻な影響が生じていることを切実に訴えた。

 さらに、長江デルタの中心地である上海市が、コロナ収束後の経済回復の道筋を一日も早く示し、これからも中国の経済発展を牽引し続ける意志とプロセスを明らかにしてほしいと求めている。

 中国政府もようやく軌道修正に乗り出した模様だ。まず、鍾南山氏ら専門家はメディアに、ゼロコロナ政策は経済・社会の正常化のためにも「長期的に続けることはできない」といった発言を公開した。

 続いて上海市は稼働再開企業のホワイトリストを公表した。最初の適用対象となった666社の約4割が自動車産業だが、他の業界の企業もこれから追加されていくという。市民生活を守るために、約2万人近くの配達員もホワイトリスト管理下に入れた。

 4月18日、中国全国物流円滑化と産業チェーン・サプライチェーン安定促進を保障するテレビ電話会議が北京で開催され、劉鶴・副総理は民衆を中心に、大局的な意識を持たなければならないと会議参加者に求めた。この会議では物流従事者の労働・生活条件を改善し、ローン返済猶予などの金融支援を行う必要があると認めたばかりでなく、全国統一通行証の発給と使用、PCR検査結果の48時間以内の全国範囲の相互承認などの措置も打ち出した。

 さらに、PCR検査結果を待つことを理由に通行を制限してきたこれまでのやり方は物流の中断をもたらしたと批判し、検査結果を待たずに車両の通過を認めることになった。陽性となったら、後を追いかけて対策をとる方向へ軌道修正した。

 上海のロックダウンはまだ続いているが、トンネルの先にようやく光が見えたと考えていいだろう。

(作家・ジャーナリスト 莫 邦富)