判決によると、ゴーン被告の高額な報酬を開示せずに維持するため、支払い済みの報酬だけを有報に記載するよう元秘書室長に指示。未払い分を隠しながら報酬額の計算書なども作成させ、ゴーン被告は1円単位で把握していた。

 その上で「犯行はゴーン被告の利益のためになされ、ケリー被告に直接的な利得はなかった。本件の主犯はゴーン被告だ」と認定。背景に「長期の独裁体制で醸成された日産の企業体質があった」と指摘した。

 つまり、ケリー被告(被告・検察側の双方が控訴)と法人としての日産(確定)の判決で、ゴーン被告の有罪が認定されたわけだ。

 ゴーン被告は共同通信のオンライン取材に応じ「日本の司法や協力した日産の体面を保つための判断だ」と批判。主犯とされたことには「不在の私に是が非でも罪を着せたいようだ。司法のごう慢さを示している」と主張した。

ゴーン被告の裏切りで
とばっちりを受けた人たち

 前述のデスクによると、実は金融証券取引法違反事件では、検察側の完全勝利は厳しいかもしれないという予想はあったという。今回、ケリー被告が無罪となった部分は、司法取引した元秘書室長の証言に対する信用性を否定した結果だが、ほかにも過去に未払い報酬の不記載について違法かどうかの判例がなく、将来的に顧問や相談役として就任できないなど何らかの理由で報酬を受け取れなくなった場合はどうなるのか――など、予測不能な点があったという。

 ただ、日産に対する判決が司法判断として確定したわけで、二審東京高裁がケリー被告に無罪を出してしまうと整合性が取れなくなる。元秘書室長の証言を追認して完全有罪か、一審を追認するのではないかとみられる。