米国で利上げと量的引き締めが同時進行
未経験の事態に企業トップは身構える

 1990年代の初頭以降、世界経済はグローバル化し、低物価と緩やかな経済成長が同時に進んだ。それは、緩和的な金融政策の運営を可能にし、金利低下、株価上昇などを支えて世界経済の安定をもたらした。

 しかし、米中対立やコロナ禍、ウクライナ危機などによって、世界は脱グローバル化に向かい始めた。特に、ウクライナ危機によって世界経済の「ブロック化」が鮮明だ。エネルギー資源などの価格が急上昇し、物価上昇と経済成長率の低下が同時に進む時代を迎えた。

 米国では4月、生産者物価指数が前年同月比で11.0%上昇。個人消費支出(PCE)の価格指数は同6.3%、コアPCE価格指数も4.9%上昇している。

 ユーロ圏では4月、生産者物価指数が同37.2%も急上昇し、5月の消費者物価指数の速報値が同8.1%上昇している。

 米国では5月から物価上昇ペースが鈍化したが、ユーロ圏ではインフレ圧力が一段と強まっている。ウクライナ危機が長期化しそうなことを考えると、世界的に物価はさらに上昇する可能性が高い。また、ピークアウトした後も高止まりが続くだろう。

 インフレ退治のために、6月から米国では量的引き締めQTが始まった。FRB内部では物価上昇への危機感が一段と高まっている。FRBはコロナ禍における経済をサポートするために実施した超低金利政策と過剰なまでの流動性供給を改め、0.50ポイント以上の幅での追加利上げとQTを急速かつ同時に進めている。

 利上げとQTの同時進行は初めてのことだ。企業業績や労働市場、金融市場にはかなりのインパクトがあるだろう。そのため、リスクテイクを減らして守りを固めようとする一般企業や金融機関のトップが増えている。