原油価格の上昇に
歯止めがかからなくなる懸念

 世界的な金利上昇は政府、家計、企業の資金繰りを悪化させる。食糧やエネルギー資源、電力などの価格上昇によって家計は支出を減らす。他方、企業は価格転嫁をさらに進めるため、民間最終消費支出は落ち込むことも考えられる。世界的な物価上昇で事業運営コストは跳ね上がり、設備投資を削減し、雇用も減らさざるを得ない企業が増える可能性も高い。

 世界第2位の経済大国である中国では、ゼロコロナ政策や不動産バブル崩壊の深刻化によって経済成長率の低下が鮮明だ。世界全体で貿易取引が伸び悩み、各国でGDP成長率が低下する恐れがある。

 米国経済が、物価の高騰と景気後退(2期続けて実質GDP成長率がマイナス)が同時に発生する状況に陥れば、株価をはじめ資産価格は大きく不安定化せざるを得ない。金利上昇が株価の調整圧力を急速に高め、信用リスクも上昇する。

 となると、リーマンショック後の低金利環境下で、高い利回りを求めて資金が流入したジャンク債(信用格付けがBB格以下の債券)の利回りは、さらに上昇(価格は下落)するだろう。世界的に不動産の市況にも、かなりの下押し圧力がかかるはずだ。

 特に注目すべきは、世界的な紛争などの外部要因によって、原油という最も重要な資源価格の上昇に歯止めがかからなくなる懸念だ。外部要因は、基本的に財政・金融政策では解決が難しいからだ。

 最悪のケースでは、物価上昇と景気後退が同時に進む、いわゆるスタグフレーションに陥ることも懸念される。世界経済の先行きに過度な楽観は禁物だろう。