資産に余裕があるため
住宅ローン「繰り上げ返済」も視野に

 Uさん夫婦の年金額は、2022年度の新規裁定額(夫婦2人分)である月間21万9593円、年間263万5116円とし、手取り額を230万円とします。

 この頃には、息子さんはほぼ確実に就職・独立しているでしょうし、年間支出は450万円に減る(40万8000円減)と仮定します。

 その場合、年間赤字額は220万円(450万円-230万円)。Uさんが65歳から、住宅ローンを支払い終える75歳までの10年間で取り崩す金額は2200万円です。この時点で残っている金融資産は2391万円(4591万円-2200万円)です。

 75歳以降は住宅ローンがなくなりますが、「管理費・修繕費・税金など含む」との記載があるので、全くのゼロにはならないと予想します。

 これまで支払ってきた月16万円のうち、住宅ローン本体を月12万円、上記の雑費を4万円と仮定すれば、年間144万円(12万円×12カ月)の支出が減額されます。

 これにより、年間赤字額は220万円から76万円(220万円-144万円)に減ります。75歳時点の金融資産額が2391万円であることから、毎年76万円を取り崩しても、そこから約31.5年(Uさん106.5歳まで)は持ちます。

 このように、Uさんは金融資産に余裕があるため、住宅ローンの負担を75歳まで残さないよう繰り上げ返済を行っても良いと思います。

 仮に、60歳の定年に合わせて完済するとします。その時点で、40歳の頃から約20年間ローンを払い続けているわけですから、支払い済みの金額は2880万円(144万円×20年)、残債は2120万円(5000万円-2880万円)程度になっているでしょう。

 先ほど説明した60歳時点の金融資産(5295万円)から、この残債(2120万円)を差し引いた場合の金融資産額は3175万円です。かなり減ってしまいますが、それ以降は住宅ローンを支払う必要は一切ありません。

 この場合、60~65歳にかけての年間支出額は、先ほど試算した490万8000円から144万円少ない346万8000円です。この時期の年収(手取り)は350万円なので、収支はプラスとなり、金融資産を取り崩す必要はありません(ごくわずかですが、逆に貯金もできます)。

 それでは、住宅ローンを完済した場合の、65歳以降の収支もあらためて計算してみましょう。