ダイヤモンド社刊 1800円(税別) |
「重要なことは、意見の不一致が存在しないときには決定を行なわないことである」(『経営者の条件』)
ドラッカーによれば、GMを築いたスローンは「この決定に関しては、意見が完全に一致していると了解してよろしいか」と聞き、反応がないときには「それでは問題を理解するための時間が必要と思われるので、いつものように、次回さらに検討することにしたい」と言ったという。
意見の不一致が必要な理由は3つある。
第一に、組織の囚人になることを防ぐためである。組織では、あらゆる者が決定からなにかを得ようとする。特別のものを欲し、都合のよい決定をしてもらおうとする。
第二に、複数の選択肢を得るためである。決定には間違う危険が伴う。最初から間違っていることもあれば、状況の変化によって間違いになることもある。決定のプロセスにおいて他の選択肢を考えてあれば、次に頼るべきものとして、十分に考えたもの、検討ずみのもの、理解ずみのものを持つことができる。
第三に、想像力を刺激するためである。反対意見、特に検討し尽くされ、かつ裏づけのある反対意見こそ、想像力にとって最も効果的な刺激剤である。
「選択肢すべてについて検討を加えなければ、視野は閉ざされたままになる。成果をあげるには、教科書にいう意見の一致ではなく、意見の不一致を生み出さなければならない」(『経営者の条件』)