チャイナドレスを着たフィギュアを
「日本の芸者」と訳して中国で炎上

 名創優品の海外進出路線は、順調に進んでいるように見えた。

 たとえば、今年5月、名創優品はスペインの美しい古都、サラゴサに「アルフォンソ1世通り歩行者天国店」をオープンしている。これは同社のグローバル化戦略を全面的にレベルアップし、海外におけるビジネスモデルの確立に本腰を入れることを示唆する重要な作戦だ。オープン当日、現地の消費者が殺到し、高い人気を得て、この作戦は成功したかに見えた。

 しかし、名創優品は7月25日、インスタグラムにチャイナドレスを身にまとったフィギュアを「日本の芸者」と訳して投稿した。この一見ささやかな過ちは、同社が歩んできた偽装和風路線を消費者に改めて認識させてしまい、中国国内では「日本憎し」の風潮と相まって、同社を批判する猛烈な砲火となった。

 ごまかしの対応では逃げ切れないと悟った名創優品は、中国のSNSである微博の公式アカウントを通して謝罪声明を発表。スペインの代理店に同投稿文の削除を要請したほか、現地のソーシャルメディア代理店運営会社に対して直ちに提携関係を終了するなどの処罰措置を講じた。

 こうした動きは株式市場にも影を落とし、香港に上場したばかりの名創優品の株価は、一時9%超も下落した。上場からまだ1カ月も経っていないのに、名創優品の香港株の株価はすでに10%以上落ちた。一方、同社の米国株も上場から2年足らずで、75%近く下落している。

 20年のニューヨーク証券市場への上場など、一見、順風満帆に見えた海外進出戦略計画も座礁し、思い通りに進むことができなくなった。

「100カ国・1000億元・1万店舗」の目標達成期限は19年から22年に延期して対応している。目下のところ、100カ国の目標はなんとか達成できたが、1万店舗の目標は半分まで進んだところで足踏み状態に陥ってしまった。新型コロナウイルス感染拡大の繰り返しにより、この性急な計画の実現はかなり難しくなっている。

 14年に池袋店をトップに日本に進出した同社は、21年12月末をもって全店舗を閉店させ、日本から撤退した。偽装和風路線を支える基礎的なインフラがあっけなく崩壊したわけだ。

 8月19日、スペイン・サラゴサの店で売り出されたチャイナドレスのフィギュアが巻き起こした批判の波を抑え込むことができなくなるのを見て、名創優品は、偽装和風路線を歩み続けたことで消費者の感情を害したと謝罪し、23年3月末までに「脱日本化する」とも宣言した。

 中国や世界の市場シェアでは、すでに無印良品を追い抜いていた名創優品は迷走状態に陥っている。果たしてうまく脱出できるのか、まだ結論は下せない。

(作家・ジャーナリスト 莫 邦富)