口座数はそれぞれ、一般NISA=1112万口座、つみたてNISA=586万口座、そしてジュニアNISA=80万口座となっており、全部合計すると1800万弱の口座数となる(2022年3月末時点)。

 NISAは非課税が適用されることから、投資の手段としては非常に有利な制度と言っていいだろう。今回のNISA制度改定はそうした有利さにさらに拍車をかけるものであるため、投資家の間では一般的にとても好意的に受け止められているようだ。

 ただし、今回の改定案はあくまでも金融庁が8月末に令和5年度の税制改正要望案としてまとめたものであり、今後議論されることになる。全てが実現されるかどうかは、まだわからない。それでも、岸田政権の方針に沿って出されたものであり、与党の中でも賛成する声が強いので、実現するかどうかについては期待をしてもいいだろう。

 では、具体的にどう変わるのかについて見てみよう。

(1)制度の一体化

 報道では「制度の恒久化」とか「利用限度額の拡大」といった内容ばかりが取り上げられがちではあるが、重要なポイントは「制度を一体化する」ということである。

 これまで前述の三つのNISAはそれぞれ別の制度であり、中でも一般NISAとつみたてNISAは両方同時に利用することはできず、どちらかひとつを選ばなければならなかった。さらにジュニアNISAは2023年末で終了ということが決まっている。

 今回の改定ではこれらを統合化し、「総合NISA」とでも呼ぶべき新しい仕組みに一本化してわかりやすくするのが大きな特徴である。

 基本は現在のつみたてNISA同様、長期運用に適した投信を対象とするが、今までの一般NISAも「成長投資枠」(仮称)という部分を総合NISAの中に作り、これまで一般NISAを利用していた人も利用できるようにする。

 さらに従来のように一般とつみたてのどちらかを選ぶということではなく、どちらも併用できるようになることから現在の利用限度額だけで考えても、利用可能額は大きく拡大することになる。

 また、ジュニアNISAは廃止されるものの、新しい案では未成年者も口座を持てるようになるため、それまでに積み立てられてきたジュニアNISAも取り込めるようになる。

(2)利用限度額の拡大

 二つ目の制度変更のポイントは利用限度額の拡大である。これがいくらぐらいになるかは、今後税当局との交渉もあると考えられるため、まだ不透明だが、少なくとも現在よりは拡大される可能性は高いだろう。

 現行制度では、一般NISAが年間120万円×5年=600万円、そしてつみたてNISAは年間40万円×20年=800万円で、これらのどちらかを選ぶわけだが、前述のように従来の一般とつみたてが併用できるようになるのであれば、それだけでも大きなメリットとなる。