NISAを改革しても
利用者が急増するとは限らない

 ただ、今回もしNISAが改定されたとしても利用者が急拡大するかと言えば、これはまた別の問題だ。ここまで述べてきたNISAの改定案は言わば既に投資を始めている人にとっては大変好ましいことではあるものの、それだけで投資未経験者が投資を始めるようになるかというと、必ずしもそういうわけではない。

 例えば別の例を考えるとわかりやすい。仮に国が国民の健康増進のためにスポーツジムに通う人に対して年間の利用料金の半分を税金で補助するという法律を作ったとしよう。

 ジムに通っている人、あるいは通いたいと考えている人にとっては朗報である。きっと喜んで今まで以上に利用するかもしれないが、ジムで運動することに何の興味もない人にとっては関係ない話だ。健康増進のためというのであれば、こうした優遇策だけではなく、運動することの大切さをより広く国民に訴えかけることも重要なはずだ。

 したがって、大事なことは制度の改定と同時に、「投資」や「資産運用」の意味、そしてさらにその前に、「税や社会保険」の知識を正しく理解してもらうことが重要だろう。

「馬を水辺に連れて行くことはできても水を飲ませることはできない」というイギリスのことわざがあるが、まさに投資というのは自分自身が必要だと思わないことには決して始める気にはならないからだ。

 そういう意味では単にNISAという投資の制度を改定することだけではなく、広い意味での金融教育についても積極的に力を注いでいき、それを継続することが大事なことではないだろうか。

(経済コラムニスト 大江英樹)