「中国に関心がある」と言いにくい

 日本の学生の目が中国に向かないのは、学生の価値観やライフスタイルの変化だけではない。学生が最も心配するのは交友関係だ。都内在住の大学生・中村理沙さん(仮名)はこう語る。

「誰もが中国にネガティブな印象を持っている中で、自分が中国に関わる活動に参加しているとは言いにくいです。自分にとって価値があると思っていても、『中国に留学したいと思っている』と率直に伝えれば、友人は引いてしまうかもしれません。友人関係にすごく気を使います」

 これは前出のアメリカ人の英語講師のコメントにもつながる。ジョージ氏は日本人大学生の英語のスピーキング力が高まらない理由について「日本の学生は少し話せる学生に対して『キモい』と言って距離を置きます。自分より“できる人材”に対しての嫉妬がとても強い」と話していた。

 交友関係を気にするあまり、あえて自分の可能性にふたをかぶせてしまうのだとしたらとても残念なことだ。

 筆者は9月、高校時代の一時期を上海で過ごしたという大学生の栗原礼佳さんに出会った。2019年9月に留学し、新型コロナウイルスの感染拡大に伴い2020年1月に帰国したのだが、当時の経験を彼女はこう語ってくれた。

「地理の先生がすごく愛国的でした。けれども、この先生が話すすべてのことが私の考えと真反対だったわけではありませんでした。韓国人や中国人とあえてタブーとされる話題について討論したこともありました。激論の末に、これまで以上の信頼が得られたことは私の貴重な体験です」

 栗原さんはこの9月、学部生として北京大学に入学する。コロナを理由に途中で日本に帰国してしまったが、それを取り返すための“リベンジ留学”だ。こういう「虎穴に入らずんば…」を地で行く“冒険女子”もいるのだ。

 留学をして世界に学ぼうとする若い中国人と、内にこもりがちな若い日本人では、放っておいてもその差は開く。学力はもちろん、さらなる国力の差になって将来の日本に大きく跳ね返ってくることは間違いない。

 経済的事情や就職事情もあるだろう。人と違うことをすれば浮いてしまうかもしれない。だが、若い世代には上述した“冒険女子”のように、信じた道を突き進む図太さを持ってほしい。

 リスク覚悟で得た“原体験”こそが、次の時代を切り開くための、唯一無二のカギとなるからだ。