コロナ要因だけじゃない?留学する日本人は減少傾向

 一方、日本の学生はどうか。

「私の教え子は、海外に行ったことがない学生が多い。大学側は短期留学などのコースをプッシュするんですが、学生の多くが『自分には必要ない』と思っているようです」

 日本人学生の海外志向についてこう指摘するのは、英語講師として都内の複数の私大で授業を受け持つジョージ・ブライト氏(仮名)だ。なるほど、行きたがらないのは中国だけではないらしい。海外に出ることそのものがおっくうなようだ。

 文部科学省の資料によれば、「日本人大学生の留学生数(1カ月未満の短期留学を含む)」は2018年度までは右肩上がりで伸び、約11万5000人に達したが、2019年度には約10万人に減少した。なお、2020年度にはコロナの影響で1487人にまで激減している。

 2018年度までは右肩上がりだったが、そこには予算をつけ、短期留学を中心に数を積み増してきた日本政府の政策も反映されている。

 また、社会人を含む数字ではあるが、こんなデータもある。OECD(経済協力開発機構)による統計データに基づく「大学・大学院の単位を伴う長期留学する日本人数」については、2004年のピーク(8万2945人)からは3割ほど減少している。近年は微かな増加を示していたが、「海外の大学への進学については道半ば」(文科省担当者)だという。

 あくまで個人の肌感覚と前置きしつつ、同省担当者は「学生の意識は二極化する傾向にある」とも語る。留学に高い意識を持つ学生が増える一方で、「やっぱり日本がいい」という意識も根強いようだ。

 コロナ禍によって留学が難しくなったことは確かだが、筆者が得たさまざまな証言を聞くと、コロナ禍がなかったとしても、国が音頭を取って背中を押さない限り、世代交代による日本人の留学生数の減少は既定路線だったのではないかと感じさせられる。

 今年大学1年になる田辺菜摘さん(仮名)は、こう話す。

「私たちは『平凡がいい、普通が一番』と言われて育った世代で、日本で安全に暮らしていくことができればいいと思っています。逆に言えば、外国に対して高い関心がないのです」