自動車大国ニッポンは
EVでは「後進国」でしかない

 日本では昨年来、日産の軽EV「サクラ」が人気を集めていて、約2万台を超える注文台数となった。20KWhのバッテリーで航続距離は約180km、価格は約233万円なので、EV補助金を利用すると100万円台で手に入る。さらに三菱自動車の軽EV「eKクロスEV」も順調に伸びている。

 日本はEVに対しアレルギーがあると思われていたが、上記のヒットが「魅力のあるEV車ならニーズは確実にある」ことを証明した。

 その一方で、「軽EVでは車体サイズも航続距離も物足りない。スペック的にはテスラのモデル3が欲しいけど、値段が600万円もして高い」と悩む潜在的EV志向のユーザー層も存在する。

 詳細は後述するが、BYDの新型EV「ATTO3」の値段は未発表だが、現地(中国)価格では350万円ほど。日本での販売価格には多少の上乗せがあると考えて、ざっくり400万円前後だとしよう。それでも、テスラの約7割の値段だ。潜在的EV志向の層がBYDのEVに飛びつく可能性は十分にある。

 トヨタに代表されるように日本は“自動車大国”であり、海外自動車メーカーにとっては世界一高い壁があると見える。韓国の現代自動車も、米フォードも敗退した。

 だが、ことEVでは日本は“後進国”でしかない。昨年日本で売れたEVはたったの約2万台で、新車販売台数のわずか0.9%。この事実は重い。

 こうしてみると、BYDが挑むのは自動車大国ニッポンではなく、「EV後進国ニッポン」なのだ。そこにBYDは勝機を見いだそうとしている。