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出口治明の提言:日本の優先順位

アベノミクスで経済政策は理論から実践の段階へ
政府は学者や官僚より現場の経営者の声に耳を傾けよ

出口治明 [ライフネット生命保険(株)代表取締役会長]
【第74回】 2013年1月29日
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 総選挙での大勝を受けて成立した安倍内閣は、矢継ぎ早に積極的な経済政策を打ち出した。このスピード感自体は評価されていい。いわゆるアベノミクスの即断実行である。アベノミクスは、一般には「大胆な金融政策」「機動的な財政政策」「民間投資を喚起する成長戦略」の3本の矢から構成される政策パッケージであると目されている。

日銀はルビコン川を渡った

 1月22日、政府・日銀は、デフレ脱却と経済成長に向けて一層の連携を強めるため、共同声明を発表した。その眼目は、「物価上昇率目標として2%を明記し、金融緩和を続ける」というところにある。多くの識者が指摘するように、政府・日銀が目標とする2%の消費者物価上昇率は、とてつもなく高いハードルである。バルブ期の1980年代後半でも、わが国の消費者物価上昇率は、平均1.3%でしかなかったのだ。

 そうであれば、今回の措置は、「半永久的に」金融緩和を継続すると政府・日銀が宣言したに等しい。容易なことでは達成できない目標であるということは、加えて量的緩和が恐らく「無制限に拡大」していくということになる。日銀は、人跡未踏の領域に向けて、ルビコン川を渡ったのである。

 わが国のこれまでの経験では、ゼロ金利のもとでいくら量的緩和を続けても、物価は上がらなかった。ここ数年来の欧米の経験でも、結果は似たり寄ったりである。経済学者の間では、概して、アベノミクス、中でも金融政策については、評価が低い。欧米の評価も、どちらかと言えば厳しいものが多いように見受けられる。

 しかし、ルビコンを渡る前ならいざ知らず、渡り切った後でアベノミクスを批判することにいかほどの実際的な意味があるのだろう。総括は後世の経済史家に委ねるとして、今、為すべきことは、未踏の領域に踏み込んだ日銀の営為を、通貨への信認が棄損されないかどうか注意深く見守り、その効果を丹念に検証していくことに尽きるのではないか。わが国の金融政策は、理論闘争の段階から実績検証のステージに移ったように思われる。

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出口治明 [ライフネット生命保険(株)代表取締役会長]

1948年、三重県美杉村生まれ。上野高校、京都大学法学部を卒業。1972年、日本生命保険相互会社入社。企画部や財務企画部にて経営企画を担当。生命保険協会の初代財務企画専門委員会委員長として、金融制度改革・保険業法の改正に従事。ロンドン現地法人社長、国際業務部長などを経て同社を退職。その後、東京大学総長室アドバイザー、早稲田大学大学院講師などを務める。2006年にネットライフ企画株式会社設立、代表取締役就任。2008年に生命保険業免許取得に伴い、ライフネット生命保険株式会社に社名を変更、同社代表取締役社長に就任。2013年6月24日より現職。主な著書に『百年たっても後悔しない仕事のやり方』『生命保険はだれのものか』『直球勝負の会社』(以上、ダイヤモンド社)、『生命保険入門 新版』(岩波書店)、『「思考軸」をつくれ』(英治出版)、『ライフネット生命社長の常識破りの思考法』(日本能率協会マネジメントセンター)がある。

ライフネット生命HP

 


出口治明の提言:日本の優先順位

東日本大地震による被害は未曾有のものであり、日本はいま戦後最大の試練を迎えている。被災した人の生活、原発事故への対応、電力不足への対応……。これら社会全体としてやるべき課題は山積だ。この状況下で、いま何を優先すべきか。ライフネット生命の会長兼CEOであり、卓越した国際的視野と歴史観をもつ出口治明氏が、いま日本が抱える問題の本質とその解決策を語る。

「出口治明の提言:日本の優先順位」

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