動きだした政府税調
消費税率「10%では財政が持たない」

 そこで代わりに動きだしたのが政府税制調査会だ。内閣府本府組織令33条によれば、その役割は「内閣総理大臣の諮問に応じて租税制度に関する基本的事項を調査審議」し、「諮問に関連する事項に関し、内閣総理大臣に意見を述べること」と規定している。委員も岸田首相が任命しており、まさに岸田内閣の税制議論において中核を担う場所といえる。

 その政府税調が10月26日に開催した総会のテーマは「消費課税」だった。財務省や総務省から消費税の歴史や使途、国際比較などの資料が提出されて議論がスタートしたのだが、参加委員から「未来永劫(えいごう)、(消費税率が)10%のままで日本の財政が持つとは思えない」との意見が飛び出した。さらに「今後の高齢化の進展に合わせて、遅れることなく、消費税率の引き上げについて考えていく必要がある」などの声も相次いだ。

 また、2009年4月に導入されたエコカー減税に関しても「道路財源を確保する必要があり、走行距離に応じて課税することを議論すべき」といった意見も見られ、財務省や学識経験者の間では“増税”が既定路線となりつつあるように映る。

 岸田首相は自民党政務調査会長時代の20年9月11日、「新型コロナウイルスとの戦いの中での増税は難しい。その先の時代に社会保障制度を改良し、必要であれば(消費税率を)引き上げを考えるというのが私の立場だ」と語っている。鈴木俊一財務相も今年1月に「今のところ増税は想定していない」と述べていたが、今日はもはや岸田首相が語っていた「その先の時代」にあるということなのだろうか。

自民・公明の税調も防衛費増額で
「所得税の増税」を想定

 増税議論が盛んなのは政府税調ばかりではない。自民党税制調査会の宮沢洋一会長は政府が検討している防衛費増額に伴う財源に関して「所得税、法人税を含めて白紙で検討する」と語る。そして、いずれかの増税が選択肢になるとの見方を繰り返す。この点は連立政権を組む公明党の竹内譲税調副会長も10月27日、防衛費増額の財源税目として「所得税などが想定される」と指摘している。

 年末の23年度税制改正に向けた議論では、岸田首相が掲げた「金融所得課税の強化」も俎上(そじょう)に載せられる見通しだ。昨年末は株価下落や市場の混乱を招いたため棚上げしたものの、これも「長期政権」になるとにらんだ動きの一つだろう。

 現在、株式の売却益や配当金などは一律20%の課税になっているが、富裕層の税負担を重くするべきとの声が相次いでいる。宮沢氏は「今年はしっかり議論しなければならない」と前向きな姿勢を見せる。