ただ、岸田首相が掲げる「資産所得倍増プラン」は少額投資非課税制度(NISA)の拡充が柱だ。10月28日に決定した総合経済対策においても個人金融資産を貯蓄から投資にシフトさせるべく、NISAの抜本的拡充・恒久化を検討するとともに、個人型確定拠出年金(iDeCo)の制度改革を検討するとしている。

 株式の譲渡益や配当金など金融商品から得られる所得に対する課税を強化しながら、一方では「国民の皆さん、投資してください」と呼びかけるのは違和感が残る。

「黄金の3年」を手にした岸田政権に
財政再建派が増税を期待か

 今回の経済対策には、高騰する電気代・ガス代などの負担軽減策を盛り込み、来年1月からの9カ月間で標準的な家庭の負担は4万5000円減になると試算されている。だが、消費税率が8%から10%にアップした際は、世帯年収にもよるが1世帯当たり年間3万~6万円程度の負担増になると試算された。それも一時的ではなく、恒久的なものだ。

 消費税は1989年に導入され、税率が3%から5%にアップされるまでに8年を要している。消費税導入時の首相、竹下登氏は直後にリクルート事件の影響もあって退陣。また、5%への税率引き上げを手掛けた橋本龍太郎首相(当時)も翌年の参院選惨敗を機に辞任に追い込まれている。政界で「消費税増税は鬼門」といわれるのはこのためで、5%から8%に引き上げられるまでには17年もかかった。

 だが、安倍晋三内閣は14年4月に消費税を8%へ、19年10月には10%へと短期間に2度も税率を引き上げている。民主党最後の野田佳彦内閣時代に決まった社会保障・税一体改革に基づいた増税路線だったとはいえ、「安倍内閣の政権基盤が弱ければ絶対にやらなかった。長期政権になると思われたからこそ、与党も官僚も進めた増税だった」(全国紙政治部記者)というわけだ。

 こうした観点からすれば、「黄金の3年」を手に入れたといわれる岸田政権に「財政再建派」が増税路線を歩むことを期待するのも無理はない。

 ただ、岸田首相が率いる派閥「宏池会」(岸田派)は自民党の第4勢力にすぎず、最近のマスコミ各社による世論調査では内閣支持率が続落している。最大派閥を事実上率いて、保守系議員も束ねていた安倍氏とは「推進力」が大きく異なる。