約半数が休職に……後遺症が仕事に与える影響は甚大

 日本でいち早く「新型コロナ後遺症外来」を立ち上げたことで知られる、東京都渋谷区の『ヒラハタクリニック』(平畑光一院長)の調査では、オミクロン株の流行後に後遺症外来を訪れた患者の約45%が休職を余儀なくされているほか、約8%が解雇・退職・廃業に至っており、72.8%もの人が「労働に影響あり」と訴えている。

新型コロナウイルスの後遺症の影響で、休職や解雇・退職・廃業に追い込まれた患者の数(出典:横浜市立大学)新型コロナウイルスの後遺症の影響で、休職や解雇・退職・廃業に追い込まれた患者の数(出典:横浜市立大学

「労働への影響」は、生命をも脅かす。横浜市立大学附属病院化学療法センターの堀田信之センター長と、慶應義塾大学医学部精神・神経科学教室の森口翔助教の共同研究グループは、「新型コロナ禍の影響で、失業率が増加し、社会経済基盤の弱い若年女性を中心に自殺が増加している」と警鐘を鳴らす。自殺による死亡の増加は同時期の失業率と連動しており、特に20代女性の自殺率は72%も増加しているという。

日本では200万~400万人に後遺症が残る可能性

 2022年9月、新型コロナウイルス感染症の国内の累積感染者数は2000万人を超えた。WHO(世界保健機関)は、各国の研究報告から、感染者の1~2割で後遺症が起こる可能性を指摘しており、単純計算で200万人から400万人もの人が罹患していることになる。

 そんな中、7月に東京慈恵会医科大学・ウイルス学講座(近藤一博教授)は、後遺症の主要症状である、倦怠感とうつ症状の原因とメカニズム、さらに、認知症の治療薬であるドネペジル(商品名:アリセプト)が症状の改善に役立つ可能性を突き止めたと発表した。

 同講座は2020年、「疲労」と「うつ病」という二大問題のメカニズムを世界で初めて解明したことで知られており、本研究はその見識を評価した日本医療研究開発機構(AMED)から支援を受けて行ったものだ。近藤教授に話を聞いた。