上述の知人の大学教員は、次のように語った。

「もし政府のゼロコロナ政策が今後も続くなら、2019年の秋に入学した学生は、来年の夏卒業するまで、まともな高等教育を受けたとはとてもいえない。これは通信教育と同じだ。それだけではない。彼らには、楽しい学校生活どころか、“コロナ、PCR、封鎖、移送、隔離”などの記憶しか残らないだろう。将来の自由な発想力に影響が出そうだ。そして何より、18〜22歳という人生で一番大事な青春時代が、完全に自由が制限されていた4年間ということになってしまう。これからの人生にどういう影響があるか、実に心配だ」

 筆者は日本在住だが、事務所の近くに大学があるので、毎日、最寄り駅周辺はたくさんの大学生でにぎわっている。駅前の飲食店には昼になれば学生たちが列を成し、彼らはワイワイしながら楽しんでいるように見える。日本ではごく普通の光景だ。しかし先日、中国から公務で来日した仕事関係者たちは、筆者の事務所を訪れた際「いつ、中国の大学生もこのように自由になるのだろうか……」と万感の思いでつぶやいていた。

 中国の大学生たちの「運命」は、国の動向に強く影響されている。来年8月に卒業しても、次に待つのはおそらく「就職難」だ。経済が低迷していることもあり、状況はそう簡単には好転しないだろう。しかし、一度しかない大学生活をコロナで台無しにされた彼らに、せめてその分明るい未来が訪れることを祈るばかりだ。