数十人の陽性者が出ただけで、
大学全体が封鎖され、対面授業はなくなる

 これは氷山の一角に過ぎない。こうした事態が、あちこちの大学で発生したのだ。

 今年は、中国各地の大学で学生による抗議や暴動が相次いで発生した。上海同済大学や上海財経大学、河南省鄭州大学など、名前を挙げればきりがない。中国版ツイッター「微博(Weibo)」では「大学の封鎖管理は正しいのか?」という話題に関する投稿へのアクセス数が5億にも達した。

 大学のある場所でたった数十人の陽性者が出ただけでも、その都度大学のキャンパス全体が封鎖され、学生が寮に閉じ込められる。その間はオンライン授業となり、食事は学校から届けてもらうか、デリバリーで済ませることになる。そして、濃厚接触者とみなされれば隔離施設に移送される。多くの大学では隔離の対応をしきれず、学生の親元に疎開させることが多かった。実際、上述の内モンゴル工業大学の学生たちは、今年上半期の一学期の間、1日も登校することができなかったという。

「コロナ時代の大学生」「オンライン授業世代」
と呼ばれるのでは

 2019年の秋(9月)に入学した大学生は、学生生活の4分の3をこんな状況の中で過ごしていたことになる。ほとんどの授業はオンライン、来る日も来る日も延々と続くPCR検査、数カ月に及ぶロックダウンで寮に閉じ込められる生活……キャンパスが頻繁に封鎖されるので、サークル活動も中止され、友達とも数カ月会えない。本来なら、大学生活において良い思い出となるような恒例の行事・イベントは、すべて中止された。

「コロナ禍に大学生活を送った世代は、今後『コロナ時代の大学生』や『オンライン授業世代』などの新しい名前で呼ばれるかもしれない」、そう話すのは、10年前に日本の大学で博士号を取得し、その後帰国して北京の大学で教壇に立つ筆者の友人だ。

「中国の若者は、小中高は高考(大学進学受験)に突っ走ってきた。大学に入り、ようやく解放されて、いろいろなことを経験しながら、人格の形成や交友関係を築いたり、恋愛もいっぱいしたりして、楽しい青春を謳歌(おうか)する4年間であるべきなのに、コロナでこれらはすべて破壊されてしまった」と彼は嘆く。