花粉症治療薬をめぐる薬局・薬店での販売商戦が激しさを増す。今年の花粉シーズンから、耳鼻科などの医療機関で長年処方されてきた鼻炎用内服薬(抗アレルギー薬)が続々と大衆薬へ転用され、処方箋なしでも薬局・薬店で購入できるようになったのである。
転用ラッシュの火ぶたを切ったのは2011年10月にエスエス製薬が大衆薬として発売した「アレジオン10」。続いて12年11月に久光製薬が医療用医薬品「アレグラ」を大衆薬に転用して「アレグラFX」を発売した。
さらに今年2月1日、医療用医薬品「ジルテック」を大衆薬に転用してグラクソ・スミスクラインが「コンタック鼻炎Z」、佐藤製薬が「ストナリニZ」をそれぞれ発売した。
これらの抗アレルギー薬は抗ヒスタミン薬の中で“第2世代”と呼ばれるもの。その多くは古い世代の薬に比べて眠くなりにくく、1日1回の服用で済むといった特徴を持つ(アレグラFXの場合、1日2回の服用)。
医療用医薬品を大衆薬に転用すると「第1類医薬品」に分類され、薬剤師による対面販売が義務付けられる。このため、販売機会の損失につながりやすく、「値崩れはしにくいが、大量には売れない」(製薬会社幹部)というのが業界の常識だった。
しかし、抗アレルギー薬に限ってはその常識が打ち破られた。昨年3月の花粉シーズンピーク時に「アレジオン10」の鼻炎薬市場シェアは14.5%に達し、大正製薬の「パブロンシリーズ」に次ぐ、2位に躍り出た。
鼻水や鼻づまりを治す抗アレルギー薬は利用者が効果を実感しやすく、大衆薬向きともいえる。
10年1月から12年末までに医療用医薬品から大衆薬へ転用された17の薬のうち、九つが抗アレルギー薬。大衆薬への転用が検討されている抗アレルギー薬はまだまだあり、今後も店頭のラインアップが増えていくはずだ。
(「週刊ダイヤモンド」編集部 山本猛嗣)