子ども心に社会を考えた
『ウルトラQ』が復活

 1966年に放送され、日本の特撮ドラマの先がけとなった『ウルトラQ』のリメイク版が、今年1月からWOWOWで『ネオ・ウルトラQ』として復活しました。

 今から50年近く前、『ウルトラQ』は、1話完結の全28本のエピソードで制作されました。当時、日本でも人気のあった米国のSF空想ドラマ『アウター・リミッツ』や『トワイライト・ゾーン』をモデルに、日常生活におけるさまざまなバランスが崩れた時に起こる異変や怪事件を特撮技術を駆使して描き、ほとんどの放送回で視聴率が30%台に乗るという大人気番組となりました。

 登場する怪獣や○○星人といったキャラクター造型、近未来的なメカニカル・プロップ(小道具)は、後に円谷プロ空前の大ヒットとなる『ウルトラシリーズ』の基礎となったと言われています。

 怪異現象を通して、公害による環境破壊、地域社会崩壊による人間性の喪失など、当時の現実社会の闇に鋭く切り込んだ作品の、単なる怪奇ものの域をはるかに超えた、いわば社会派ドラマといえるストーリーには、当時の日本社会に宿るさまざまな問題が提起されていて、私は子どもながらにこうした社会問題を考えさせられたことを覚えています。

 そして今回の『ネオ・ウルトラQ』も、現代の日本社会が抱える闇を鋭くえぐる内容になっています。

 ストーリーを番組のオフィシャルサイトから一部抜粋して紹介します。

 ――不可解な出来事に引き寄せられるのは、心理カウンセラーの南風原仁(はいばら・じん=田辺誠一)、トラベルカルチャー誌のライター渡良瀬絵美子(わたらせ・えみこ=高梨臨)、バー「トビラ」のマスター白山正平(しろやま・しょうへい=尾上寛之)という、境遇も考え方もまったく異なる3人。南風原の恩師・屋島教授に助けられながら、3人は人知を超えた“力”に向き合っていく――(WOWOWのページより)。

 前作が放送された47年前の日本社会は、高度成長の真っただ中にあり、そんな、社会構造が急速に変化していく時代における、社会の歪や矛盾をテーマに取り上げた内容で構成されました。

 今回のシリーズは、政局が迷走し、中国や韓国、東アジアの国々の経済成長に圧倒され、閉塞感に満ちている現代の日本人の心の闇に鋭く切り込んだストーリー展開になっています。新旧二つのシリーズを見比べた時、同じコンセプトで社会的テーマを追った番組でも、背景となる時代感の違いでここまで表現が違うのだ、と、改めて興味深く毎回の放送を楽しんでいます。