歴代のJFA専務理事を振り返れば、田嶋会長も原博実氏(前Jリーグ副理事長)も元日本代表であり、原氏は浦和レッズとFC東京で監督も務めた。しかし、代表キャップと監督歴に加えて代表でキャプテンを務め、W杯で戦い、海外でプレーした経験をも持つのは宮本氏が初めてとなる。

 自身も務めた専務理事職を「JFAの顔だと思っています」と語ったこともある田嶋会長は、一気に若返ったナンバー3への期待を「非常に大きいですよ」と言い、こう続ける。

「いろいろな経験をしてきたなかで、今度はJFAのなかで経験を積んでほしい。JFAのなかには彼が知らないことがまだまだたくさんあります。これからはヨーロッパを経験した人たちが日本サッカー界を変えていく時代になっていく。彼はその一人目の旗頭となれる人材だと思っています」

将来のJFA会長も
宮本氏に敷かれたレール

 16年3月にJFAの第14代会長に就任した65歳の田嶋氏は現在、4期目を務めている。JFAは19年10月の規則改定で、会長任期を最長で4期8年と明文化した。田嶋会長自身も最後の任期と明言しているなかで、今年12月から来年の年明けにかけて次期会長選挙が実施される。

 以前はJFAの評議員会で理事会のメンバーが選ばれ、新理事による互選で代表者、すなわち会長が決められてきた。しかし、FIFAが13年になって傘下の全サッカー協会に対して、会長選挙の実施を含めた標準規約の制定を通達。JFAでも15年12月から会長選挙が導入された。

 会長立候補者はJFAが定める「役員の選任及び会長等の選定に関する規定」で、実際に就任した場合に満70歳未満である年齢に加えて、次の要件を満たしていなければいけない。

「直近5年間のうち2年以上、本協会、地域サッカー協会、都道府県サッカー協会、Jリーグ、各種の連盟、リーグ、クラブ等の役員、職員、選手、審判、指導者、その他サッカーと関わりが深いと認められる立場で、サッカー界において実質的に活動し、貢献していること」(原文ママ)

 その上で評議員または理事から合計で20人以上の推薦を得て、選出管理委員会に対して初めて立候補の意思を表明できる。会長立候補者が複数になった場合は、次回でいえば24年1月の臨時評議員会で、75人を数える評議員による無記名投票で会長予定者1人が選出される。

 いきなり次期会長はないとみられるものの、田嶋会長をして「顔」と言わしめた専務理事に抜擢された宮本氏を巡る人事には、将来的な会長就任への期待も込められていると言っていい。

 一方で4人を数えるJFA副会長の1人で、日本代表監督としてW杯の2大会で指揮を執った66歳の岡田武史氏は、4年前の18年3月にS級ライセンスの更新を見送っている。理由は後進に道を譲るためであり、さらに「資格を持っていると(復帰への)色気が出ちゃうので」と語っていた。

 岡田副会長の場合はJ3のFC今治の運営会社の代表取締役を務めるなど、指導者から経営者へシフトした立場もS級ライセンス返上を決意させた。ならば、宮本氏はどうか。もしも今後、監督就任のオファーが届いたときには、JFA専務理事としてどのような選択肢を持ち合わせるのか。

 指導者への未練の有無を問われた宮本氏は「まあ、せっかく取得したS級ライセンスなので」と現場復帰優先をにおわせながら、すぐに「それは冗談です」と否定。さらにこんな言葉を紡いだ。