体力の「見える化」は、
医療にも、健康維持・体力づくりにも役立つ

 高額な機械と専門家のサポートがないと測れなかった「人それぞれの中強度」が、簡単かつ正確に「見える化」できるようになると、どんなメリットがあるのだろうか。

 まずは「医療」において。その昔は、「病み上がりは安静にする」が常識だったが、現代では脳や心臓といった循環器の重篤な疾患でも、生命をとりとめた後はできるだけ速やかにリハビリテーションを開始することが機能回復のためには大切といわれている。

 だが、心肺機能が弱っている人を安全に運動させるのは難しいし、心配だ。本人にとっての負担も大きい。

「パルスオキシメーターを指に装着して、実際のリハビリの動作をしながら、体力の回復状況に応じた最適で安全な運動強度と運動時間が分かるようになれば、回復の効率化も図れるし、自宅でのリハビリ開始も早められ、再発予防にもつながるでしょう。医療費の削減効果も見込めます。さらに、体力を付けると、がんの再発率が低くなることも分かっています」

 安全かつ手軽な体力づくりを可能にすることは、病気やケガからの回復を早めるだけでなく予防にも大きな効果を発揮する。

「健康維持・体力づくり」も同様だ。運動習慣がない人や、心肺機能が弱っている人がいきなり運動をするのはリスクがある。運動不足の人がいきなり運動して突然死…という話も時々聞くが、体力の見える化は、そんなリスクを回避して、ほどよく継続できる運動強度と運動時間を知るのに役立つ。

 もちろんスポーツやボディーメークなど、健康で体力もある人の身体機能や競技力向上にも、トレーナーやコーチが「質と量を考慮した運動プログラム」の作成や指導を簡単かつ正確にできるようになるという大きなメリットがある。

 特許を取得したファンケルは、今後この新技術を応用し、横浜市立大学附属病院リハビリテーション科の中村健教授(医師)と広島大学病院リハビリテーション科の三上幸夫教授(医師)、横浜市、スポーツ庁の協力を得て、協業を進める予定だ。スポーツ中でも装着できるようなウエアラブルデバイスや、医療プラットフォームでのデータ利活用などを目指すという。

「これが実現できれば世界を変える技術になる。運動を通じて世界中の多くの方々に貢献できるよう、さまざまな機関と協働してさらに研究を深めていきたいです」

 50年ぶりに進化を遂げる体力測定技術は、ヘルスケアにも画期的な進化をもたらすだろう。