パルスオキシメーターで
血中酸素飽和度を測れば中強度が分かる

 阿部さんも、簡単で正確に中強度(AT)を測定する方法の開発に挑んだ。マラソン大会に出場する同僚から、「自分に最適な運動強度と運動時間を簡単に調べられないだろうか」と相談されたのがきっかけだった。試行錯誤を繰り返す中、呼吸時の酸素と二酸化炭素の流れの図を見ていた時、あることに気が付いた。

「呼気のCO2濃度と血中酸素飽和度はリンクしていて、呼気ガス分析法の代替指標になるのではないかと思いました」

 血中酸素飽和度は、血中にどれだけ酸素が含まれているかを示す数値で、「パルスオキシメーター」という指にはさむ機械を使って測定することができる。コロナ禍が始まって以降耳にする機会が増えたので、ご存じの方は多いだろう。

 呼気の中のCO2濃度と血中酸素飽和度はリンクしているという仮説を立てた阿部さんは、呼気で測定したVTと、血中酸素飽和度で測定した酸素飽和度性作業閾値(SpO2 Threshold : ST)の比較検証を試みた。すると期待通り、VTとSTには「良好な一致」があることが分かり、仮説は見事証明されたのだった。

エルゴメーターで運動負荷をかけながら、呼気ガス分析法(VT)を行いつつ、酸素飽和度(SpO2)を同時に測る様子エルゴメーターで運動負荷をかけながら、呼気ガス分析法(VT)を行いつつ、酸素飽和度(SpO2)を同時に測る様子。ATと、SpO2によるSTを同時に測定(出典:ファンケル)

「結論として、血中酸素飽和度によるSTは、既存のVTの代替手法となり得る、つまり、従来の高額機器による測定から、パルスオキシメーターを使っての測定に簡略化できることが分かりました」

 ファンケルはこの成果を昨年11月、プレスリリースで発表した。