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日本を元気にする経営学教室III

倒れ行く巨象を変貌させた
ガースナーのIBM改革のやり方
――ヘイグループ プリンシパル 滝波純一

カルチャー・トランスフォーメーション(3)

滝波純一 [ヘイ コンサルティング グループ プリンシパル],松尾博文 [神戸大学大学院経営学研究科教授]
【第5回】 2013年2月25日
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 1990年代にIBMを立て直したルイス・ガースナーは、彼の著書『巨像も踊る』(日本経済新聞出版社)で企業文化について次のように書いている。

 「IBMに来る以前に聞かれればたぶん、企業文化は企業を成り立たせ成功に導く要因のひとつだと答えただろう。……IBMでの約十年間に、私は企業文化が経営のひとつの側面などではないことを理解するようになった。一つの側面ではなく、経営そのものなのだ」

 1992年、約50億ドルという巨額の赤字を出し、瀕死の状態にあったIBM。ガースナーは1993年にCEOに就任し、それからわずか5年で60億ドル強もの利益を計上するまでに復活させた。一体、彼は何をやったのだろうか?

 ガースナーは、メインフレームの箱売りに依存していたビジネスを、ITソリューションと多様なエンジニアによる問題解決の提供へと、ビジネスモデルを大きく転換した。ビジネスモデルの転換に加え、コスト削減や組織変更など、さまざまな取り組みも実行。IBMが「e-business」という有名なコンセプトを作り、積極的なマーケティングを実施していたのも、このころである。

 しかし、この改革は、簡単にできたわけではない。新しい戦略がいくら明確であっても、人は簡単に変われるわけではない。ましてや、複雑な組織階層、既得権益の横行、IBM語に代表されるような、閉鎖的な企業文化をもっていた巨大企業である。そして、この難しい課題に対するガースナーの取り組みは、まさにカルチャー・トランスフォーメーションであった。

 もちろん、当時はカルチャー・トランスフォーメーションの方法論などまだ確立しておらず、試行錯誤を繰り返しながらの取り組みであったはずだ。しかし、今から振り返ってみても、彼がやったことは、非常に理にかなっており、参考になる面が多い。

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滝波純一 [ヘイ コンサルティング グループ プリンシパル]

たきなみ じゅんいち/京都大学工学部卒業、同大学院応用システム科学修士、カリフォルニア大学ロサンゼルス校(UCLA)経営学修士(MBA)。東レ株式会社、ボストン コンサルティング グループを経て、2009年より現職。2010年より同社コンサルティング部門責任者。医薬品、消費財、流通、情報通信等の幅広い業界に対し、グローバル人事制度構築、リーダー育成、M&A支援等、幅広いコンサルティングを実施。

松尾博文 [神戸大学大学院経営学研究科教授]

まつお・ひろふみ
京都大学工学部数理工学科卒業。1984年米マサチュ-セッツ工科大学大学院経営学研究科博士課程修了。米ペンシルバニア大学経営大学院客員準教授、米テキサス大学オースティン校経営大学院教授(Fred H. Moore Professorship)、筑波大学社会工学系教授を経て、2004年から神戸大学大学院経営学研究科教授。専攻はオペレーション・マネジメントとサプライチェーン・マネジメント。国際的学術雑誌の論文多数、編集委員を歴任。現在、日本オペレーションズ・マネジメント&ストラテジー学会会長。


日本を元気にする経営学教室III

【シリーズ「オペマネの思考法」/松尾博文】
オペレーションズ・マネジメント(オペマネ)は欧米のビジネススクールでは必須科目である。オペマネは、製造業とサービス業の事業プロセスを対象とする学問体系で、企業と組織の事業プロセスを中心に、製品、顧客、マーケティング、経営、戦略を考える科目である。本シリーズでは、オペマネの基本的な思考法を解説し、日本の製造業が陥っている問題点の解決策を、事業プロセスの見直しというオペマネの方法論から議論する。簡単な事例、極端な事例、理論と実践を取り混ぜて、論理的に考えるための糧(Food for thought)を提供することを目指す。

 

【シリーズ「カルチャー・トランスフォーメーション」/滝波純一】
企業文化は経営そのものである」というのは、1990年代に瀕死のIBMをよみがえらせたルイス・ガースナーの言葉である。多くの経営者は企業文化が業績に及ぼす影響がいかに大きいか知っている。一方で、企業文化を変革することが、いかに難しいかも、多くの人の知るところである。近年、人事・組織の領域では、日本よりも、海外の方が一歩進んでいると言わざるを得ないのだが、海外では「カルチャー・トランスフォーメーション」として、多くの企業が企業文化の変革に取り組んでおり、そこから有効な方法論も見出されつつある。事業環境が激変する中、日本企業にとっても企業文化の変革は喫緊の課題であり、海外での取組・確立されつつある方法論から学ぶべき点が多いのではないだろうか。本連載では、「カルチャー・トランスフォーメーション」について、紹介していきたい。

 

「日本を元気にする経営学教室III」

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