中国の若者の失業率は20.8%だが、
現実はそれ以上に状況が悪い

 その理由は明白である。今の中国経済が30年前に日本でバブルが弾けたときとよく似ていて、日本と同じ轍を踏む、つまり中国にも“失われた30年”が来るのではないかと懸念されているからだ。

 昨年末、厳しい行動制限を伴う“ゼロコロナ政策”に終止符が打たれ、人々は自由に行動できるようになった。「これから経済は回復する」と誰もが期待していた。しかし、最近発表された一連のデータは、そうした期待を裏切るものばかりだ。特に若者の雇用は深刻な状況にある。

 中国国家統計局が6月15日に発表した、5月の若者(16〜24歳)の失業率は20.8%。4月の20.4%より悪化し、最低記録を更新した。若者の5人に1人が失業状態である。ちなみに、上述の発表では、5月の都市部調査失業率は5.2%だという。

 実は、中国の統計の「失業率」では、

 ・自分の意思で退職した人
 ・都市部の出稼ぎ労働者
 ・(大学の新卒など)一度も就職したことがない人
 ・失業して3カ月以下の人
 ・週に1時間以上働いた人

 は、失業者としてカウントされていない。表に出ている失業者の数は氷山の一角に過ぎず、この他に莫大な人数が「隠れた失業」をしているのが実状だ。

 中国では今、若者が、かつてない「失業の波」にのみ込まれている。清華大学環境資源能源法学研究センターの王明遠教授は、先日、自身のSNSのアカウントに「若者の失業人口が5400万人」と投稿した。

 今年の中国の大学新卒は1158万人で、日本の約19倍である。大学新卒の数は一昨年初めて1000万人を突破して以来、年々増加の傾向にある。大学を出ても就職ができない、「卒業=失業」は常態化しつつある。中国最大手の人材会社「智聯招聘(ズーリェンザオピン)」の調査によると、今年夏卒業予定で就職活動をした学生の内定率は3割に満たない。だからこそ、日本の「新卒の就職率は90%以上」という数字は中国人にとって衝撃的なのだ。