IT企業の人員削減などの影響で、
中年の失業者も増えている

 そして、失業問題は若者に限らない。中年も仕事を失い、危機感を募らせている。コロナの影響や米中関係の悪化などにより経済が低迷し、さらに政府が繰り出したさまざまな規制が雇用市場に大きな打撃を与えたからだ。今や、アリババやテンセントなどIT系の大手企業を始め、さまざまな国内企業が人員削減を進めている。

 こうした状況を受けて、最近の中国では、失業にまつわる新しい流行語や珍現象がたくさん生まれている。

 「灵[「ヨ」の下に「火」]活就業」(フレキシブル就業、フレキシブルワーカー)とは、「特定の企業・組織に所属せず、自由で柔軟な働き方をすること、人」という意味である。正式な就職ができるまでの「つなぎ」として、大勢の大卒者がUberEatsのようなデリバリー配達やネット配車のドライバーなどアルバイトをしている。前出の王明遠教授は、コロナ禍の3年間で、デリバリー配達は800万人、ネット配車のドライバーは1200万人が増えたと話す。新規参入したのはほとんど若者で、しかも大学院生など高学歴者が占める割合が高いと指摘する。SNSでは「今やデリバリー業が知識集約型になったのだね」などと皮肉を言われている。

 また、「全職児女」は、日本語に訳すなら「専業家事手伝い子女」「専業子ども」(男性もいる)といったところだろうか。親と同居し、家事全般を担当する代わりに、祖父母や親から「給料」をもらう。相場は、月に4000〜6000元(約8万〜12万円)といったところだ。高齢者がいる家では、本来ならパートのお手伝いさんに来てもらうところを、身内に面倒を看てもらえて安心。中には家族の小旅行や家庭内イベントなどを企画手配する「全職児女」もいて、本人も家族もみんなハッピーである。世間も今のところ「全職児女」に対して肯定的だが、将来、日本の“8050問題“(80代の親が、50代の引きこもりの子どもの生活を支えることになり、社会から孤立して生活が立ちゆかなくなるという社会問題)のような事態になる恐れはないのだろうか?