そうはいっても人が足りない……現場ではいかにして休むべき?

高崎 「そうはいっても、現場では実際どうやって回してるの!?」という疑問がありますよね。私も執筆に当たり、思いつく限りさまざまな職場に取材して、休暇マネジメントの方法を伺いました。

 例えば保育園は、日本だと閉まってしまうと親が働けないから困る!ということで、コロナ禍でもよほどのことがない限りは稼働していました。でもフランスだと発想の根本から異なります。保育士だって労働者で、もちろん休む権利があるのだから、まずここは休みです、と提示される。すると通わせる保護者も、ここは保育園に預けられないから仕事を休みます、となる。エッセンシャルワーカーである医療従事者も、病院の中に遊軍看護師や医師がいて、バケーションのためにスタッフがショートする部署に派遣される。人材がプールされているわけです。

白河 それは経営側からすればコストがかかります。でも、最初からそれを計算して人を雇用し、経営計画を立てればできる。なぜフランスの経営者がやるのかといえば、休暇を与えるのは義務だから。そしてしっかり休んでもらうことで結果的に生産性が上がることを知っているんですね。その仕組みが、どこの業界でも徹底しているんですね。農業なんかはどうですか? 収穫期など、マネジメントしようのない要素がある場合もあると思いますが…。

高崎 自然に左右される職業はどうしても、時期の制限はありますね。それでも農閑期には休暇を取れるような仕組みがあります。例えば非営利団体が農業従事者OBなどを募って、時給で人員を派遣する事業を行っています。国もサポートしているので、休暇を取る人々が時給スタッフを雇う金銭的負担は低く抑えられています。とにかく、業界にかかわらず誰もが休暇を取れる仕組みが構築されていると感じますね。そこまで気合をいれてシステムを作らないと難しいという現実もある。だからこそ、日本社会で働く意識に変化の兆しがある今、仕組みの面をベンチマークしていけたらと思います。

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