「インフレ」「インバウンド」「若者」が
好循環をもたらす

 加えて過去長い間デフレが続いたことで製品やサービスの価格も上がらず、結果として賃金も上がらないということも経済低迷の大きな原因だったのではないかと思う。

 そういう意味では現在程度の物価上昇は、非常に健全なインフレであると筆者は考えている。適度なインフレが継続することによって物価、賃金が上がり、企業収益も向上するという良い循環になっていくのではないだろうか。

 また、かつてのような中国本土からの大量の団体観光客がいないので、あまり目立ってはいないものの、インバウンドは着実に増えてきている。今年1月から5月までの訪日観光客数は863万人となり、5カ月で昨年1年間の383万人を2倍以上、上回っている。この動きは決して一過性のものではないと筆者は考えている。

 さらに筆者は若い経営者や若い人と話す機会も多いが、最近、彼らの中にはとても優秀な人たちが増えてきていることを実感する。我々世代のような精神主義に陥らず、物事の進め方を実にプラグマティックに考えているからだ。地に足がついたビジネスの進め方をしているように思える。

 昭和に活躍した世代は、そう遠くない時期にビジネスの現場からは強制的に退場していくことになる。恐らくこれから20~30年後の日本は、今とはかなり違った風景になっているのではないかという予感がする。

 とは言え、ここからずっと株が上がり続けるとは思わない。株式市場というものは実体経済を移す鏡だと言われるが、むしろ鏡よりも影と言った方がよいだろう。

 影は光を当てる位置によって、大きくも小さくもなる。その時の人々のセンチメントで常に株価の上がり下がりはつきものだからだ。しかしながら、実体が着実に大きくなっていくのであれば、長期的に投資を続けていくことでやがて成功につながっていくだろう。今はまさにその入り口に立っていると考えるべきだ。

(経済コラムニスト 大江英樹)