「骨太の方針」は
実はなかなか優れている

 先日(6月16日)に閣議決定された『骨太の方針』(経済財政運営と改革の基本方針)だが、筆者は今回の中身は非常に優れたものになっていると考える。特に素晴らしいのは労働市場分野における改革である。

 メディアは政策について不勉強で内容を十分に理解できていない記者が多く、ややもすれば政策よりも簡単でわかりやすい政局の報道に走る傾向がある。そのため、あまり派手に報道されていない。ところが中身をよく読んでみると、決して派手なアドバルーンを上げているわけではないが、かなり具体論に言及されている。

 昔から「人材はコストではなく、資本だ」ということがよく言われている。これは当然だ。なぜならコストというのは利益を阻むものであるが、資本は利益を生み出すものだからだ。

 人材を“利益を生み出す”ための大きな資本であると考え、人への投資が重要であることが骨太の方針でもうたわれている。これは「人材⇒人財」と言い換えて満足しているダメ経営者にありがちな言葉の遊びではなく、真に「人への投資」のために必要な具体策が出されてきている。

 例えば「成長分野への労働移動の円滑化」についても、いくつかの重要なポイントが打ち出されている。自己都合による離職の場合の失業給付や、転職が不利にならないための退職金税制の見直し、あるいはリスキリングによって新しい能力を身に付けてもらい、成長分野に移ってもらうようにする、といったことがらだ。

 これらはいずれも派手な政策ではないが、じっくりと効いてくるだろう。

 実はこれらの方向というのは何十年も前から指摘されてきたことではある。しかしながら理念や考え方だけが先行し、古い時代の経営層が岩盤となって具体的な改革の推進が阻まれてきたのがこれまでの歴史である。

 言わば過去の成功体験にとらわれて新しいイノベーションを生み出すことができなかったということだ。今回はまさにこれを政治主導で行っていこうということであるから、これは期待していいのではないかと考えている。