実は日本経済の復活は
既に始まっていた

 多くの一般投資家の中には「日本株はダメだ。やはり今までも、そしてこれからも米国株が有望であることは間違いない」と言う人が多い。たしかに米国株は過去、大きく上昇したことは事実である。

 日本の代表的な株価指数である日経平均株価が高値を付けたのは1989年の12月だから、今から33年ほど前のことになる。当時の最高値が3万8915円なので、配当などを考慮しなければ現時点でもまだ当時の株価には及んでいない。俗に「失われた30年」と言われるゆえんである。

 一方、この間の米国株を見るとニューヨークダウ(NYダウ)は何と当時の12倍以上になっている。これを見る限り、日本よりも米国株の方が期待できると考えるのは当然かもしれない。しかしながら、過去10年に限って言えば、必ずしも日本株は米国株に劣後していたわけではない。

 これは比較する指数によっても若干の違いはあるが、先ほどのNYダウと日経平均を比べてみよう。今から10年前、2013年の6月のNYダウは1万4700ドルぐらいだったが、現在は3万4000ドル近くになっているので当時の約2.3倍である。

 ところが日経平均で見ると当時は1万2800円ぐらいだったのが現在では3万2000~3000円前後なので、2.5倍になっている。

 つまりこの10年だけに限って言えば、日本の方がむしろ上回っているのだ。

 そういう意味では、「失われた30年」という表現は必ずしも正しいわけではない。むしろ正確に表現するなら「失われた20年と経済が立ち直りつつあった10年」と言うべきだろう。

 80年代のバブル期に発生した、「設備、雇用、債務」の過剰が20年かけてようやく解消され、この10年で成長に向けた体制が整いつつあったということだと思っている。

 言わば過去10年間の準備運動の期間を経て、ここからが日本経済が本格的な成長期間に入るのではないかと筆者は考えている。その萌芽が、このところの政策にも見て取れる。