セブン&アイVS.モノ言う株主、主張が食い違う要因は? そごう・西武売却大詰めセブン&アイ経営陣はそごう・西武の売却を進め、総合スーパーの店舗閉鎖計画や衣料品事業の撤退も公表した Photo:Diamond

セブン&アイ・ホールディングスが揺れている。そごう・西武百貨店の売却問題では、そごう・西武の労働組合が、スト権の確立に向けて動き始めた。スーパー事業では、イトーヨーカ堂とヨークの再編が進行中。それもこれも、「モノ言う株主」とも呼ばれるアクティビスト・ファンドとの対立が発端だ。過去の成功体験に縛られて変革が遅れている日本企業にとって、セブン&アイの危機は、決して対岸の火事ではない。(多摩大学特別招聘教授 真壁昭夫)

セブン&アイVS.バリューアクトは
「ステークホルダー資本主義」VS.「株主資本主義」

 始まりは2021年5月だった。米国のバリューアクト・キャピタル(バリューアクト)は、セブン&アイ・ホールディングス(セブン&アイ)株の約4.3%(3800万株以上)を取得したと明らかにした。バリューアクトは、投資先企業の経営に積極的に関与し株価上昇などを狙う「モノ言う株主」、いわゆるアクティビスト・ファンドとして知られる。

 バリューアクトは、「企業の所有者は株主である」との認識に立ち、「セブン&アイは収益性の高いコンビニ事業に集中すべきだ」として、経営陣との対話を試みた。対してセブン&アイは、「企業は社会の公器であり、多様な利害関係者(ステークホルダー)との長期的な関係を構築し、持続的な成長を目指すべきだ」と主張している。

 両者の対立は、株主の価値を最重要視する「株主資本主義」と、多様な利害関係者との関係構築を重視する「ステークホルダー資本主義」との、価値観の行き違いと言い換えることができるだろう。

 今後、短期間で両者の方針の違いが解消されることは予想しづらい。セブン&アイ経営陣は、忍耐強くバリューアクトなどとの対話を進めることになるはずだ。

 ただ、これからの展開次第では、バリューアクトがセブン&アイに新たな要求を突きつける可能性もありそうだ。わが国には、経営効率の向上に苦戦する企業が多い。そうした企業にとって、今回の件は、決して対岸の火事ではない。