以下に述べるのは、「10秒間勉強するだけで、中国語が読めるようになる」という方法である。
「そんなのはマユツバだ」と感じられる読者が多いと思う。世の中には「3日勉強すれば英語ができる」という類の本が沢山あるが、それと同類、あるいはもっとひどい内容だろうと感じられるかもしれない。
しかし、そうではないのである。これは、日本語と中国語の関係が特殊であることを利用した合理的な方法なのだ。「論より証拠」を後でお見せするが、その前に、数十年前の思い出について述べたい。
『でる単』の哲学とは
『でる単』という受験参考書があった。これは、『試験にでる英単語』(森一郎著、青春出版社刊)ということで、大学入試に出る頻度が高い英単語をまとめたものだ。ある世代の人なら、大学受験の勉強で、必ず利用しただろう。発行部数が1500万部以上という超ベストセラーだ。
この本の基本哲学は、「入試に出る英単語の頻度は、ソーンダイク頻度表にある一般会話の頻度とは違う」というものだ。大学入試問題の出題者は大学の教師であって、一般より知的水準の高い本を読んでいる。だから、彼らが作る入試問題に出る単語も、バイアスがかかっている。一般英語より水準が高い単語が多い。そこで、「バイアスのかかった勉強をしよう」というのが基本的な考えだ。
そのとおりだ。私は「単語を覚えることによって英語を勉強する」という考えには反対なのだが、「一般の英語と入試の英語は違うものだ」という観察には賛成である。