「価格3億円、墓地あり、信者あり」寺・神社の売却案件がわんさか出る深刻すぎる実情写真はイメージです Photo:PIXTA

安倍晋三元首相が街頭演説中に銃撃された事件は、7月8日で発生から1年となった。統一教会と政治との密接な関係が明らかになる中、宗教法人の税制優遇の実態や運営実態の不透明さなどが問題化しつつある。現代の宗教法人が直面する状況や、ニーズが大きく変化する中での新たな動きなどについてリポートする。(ジャーナリスト 加福 文)

ネット上に多数ある
宗教法人の売買情報

「当方は○県○市にお寺を3カ寺兼務しています。禅譲を考えています」――。

 大阪府下で宗教法人売買の仲介業を担う男性のもとに、こんな打診が来たのは数年前。地方寺院の代表役員の僧侶からだった。

「最終的に1寺院につき2000万円から3000万円の値がつけられ売りに出されました。通常、宗教法人売買の仲介を頼まれるにしても1寺のみ。いくつも持ちかけられるのは珍しかった」と、仲介業を担う男性は振り返る。

「単立仏教寺院 土地あり、本堂居住施設あり、墓地あり、信者あり 譲渡価格3億円」「東京都 宗教法人 宗教法人の後継者募集型のM&A案件です。利回りを考え投資案件としても。販売価格8.4億円」「単立○○寺 墓地付き 納骨堂あり。本堂立派。4000坪以上あり。墓地経営希望者歓迎」――。

 今、ネット上で「宗教法人売買」と検索すると、次々にこんな売買情報がヒットする。信仰の対象である寺や神社が、不動産物件のように取引の対象にされている現実だ。