料理の写真を撮る手写真はイメージです Photo:PIXTA

2012年頃、ほしのあき、熊田曜子といったグラビアアイドルを中心に複数の芸能人が関わっていた「ペニーオークション詐欺事件」を覚えているだろうか。あれから約10年、この一件で広く知られるようになった「ステマ(ステルスマーケティング)」を景品表示法の禁止行為として規制する、通称「ステマ規制」が10月1日から始まった。ステマと聞くと、インフルエンサーや芸能人、あるいは広告を出稿する企業の問題だと思われるかもしれないが、実はこれ、一般的な消費者である“普通”の人たちにも関わってくる内容なのだ。どんな点に注意すればいいのか、専門家に話を聞いた。(ITジャーナリスト・スマホ安全アドバイザー 鈴木朋子)

2023年10月1日施行
“ステマ規制”とは何なのか

「うちの店のことをSNSに投稿してくれたら、お礼にアイスクリームをサービスするよ」

 なじみの店で食事した後、店主からこんなふうに問いかけられたことはないだろうか。「親しい仲だし、自分の投稿が役立つなら……」と、投稿した人も少なくないだろう。しかし、良かれと思って投稿したことが、結果的に店主に迷惑をかけてしまう可能性が出てきた。それが、2023年10月1日に施行された、ステルスマーケティング(ステマ)行為を規制する、いわゆる「ステマ規制」だ。

 ステルスマーケティングとは、企業が商品やサービスを宣伝する際に、広告であるにもかかわらず、広告であることを隠す行為を指す。例えば、ある人が企業から「報酬を渡すのでこの商品をSNSに宣伝して」と頼まれたとする。その人は報酬を受け取ったことにまったく触れず、商品をSNSでおすすめした。すると、SNS投稿を見た人は「SNSで評価が高かったから」と通常のクチコミとして誤認してしまう可能性がある。

 消費者庁はこうした事態を防ぐために、景品表示法(景表法)を改正し、不当な表示に当たる「優良誤認表示」(第5条第1号)、「有利誤認表示」(第5条第2号)、「その他、誤認されるおそれのある表示」(第5条第3号)の中から、「その他、誤認されるおそれのある表示」に「ステルスマーケティング」を追加した。

 なぜ消費者庁は景表法にステルスマーケティングを告示したのか、企業だけでなく一般の人にも影響があるのかなど、博報堂ビジネスコンプライアンス局クリエイティブリスクコンプライアンスグループ GMで、一般社団法人クチコミマーケティング協会運営委員会副委員長も務める山本京輔氏に話を伺った。

博報堂/一般社団法人クチコミマーケティング協会運営委員会副委員長 山本京輔氏博報堂、一般社団法人クチコミマーケティング協会運営委員会副委員長 山本京輔氏