習政権下では中国経済は長期低迷に陥る

 不動産バブル崩壊の影響を解消するために、習政権はいずれ大手銀行などに公的資金を注入する必要に迫られるだろう。そうして、不動産関連企業や地方融資平台などの不良債権処理を進めるはずだ。また、成長期待の高いIT先端分野にリソースが再配分されやすくなるような規制緩和も中国経済の本格的な回復に欠かせない。しかしながら、現時点で習政権はこうした政策運営の必要性に明確に触れていない。

 23年春、有能な経済テクノクラート(技術官僚)として注目された劉鶴(リュウ・ハァ)副首相(当時)が退任した。それに加えて今般、李克強前首相が急逝した。共産党政権内部において、改革を進めて経済運営の効率性を引き上げる考えは、一段と後退することが想定される。

 一方、目先の需要を下支えするため習政権は、金融緩和を強化し、国債や地方債の発行を増やす可能性が高い。これにより一時的に景況悪化が緩和されたとしても、根本的に不良債権問題を解決することは難しい。

 碧桂園に続き、融創中国控股(サナック・チャイナ・ホールディングス)など、不動産関連企業のデフォルトは累増しそうだ。不動産市況は停滞し、地方政府の財政も悪化すると、財政破綻に陥る自治体も増えるだろう。こうなるとデフレ圧力も追加的に高まる。

 今後の中国経済は長期低迷に陥るとの見方が増えている。忘れてはならないのは、社会保障制度の悪化が懸念されることだ。中国では、農村戸籍と都市戸籍によって享受できる社会保障内容が違う。地方政府の財政悪化により、年金や医療など社会保障の縮小が予想される。すると経済格差は拡大し、人民の不満は増大するだろう。

 展開次第では、習政権への批判が強まるかもしれない。こうした懸念もあり、中国から海外に拠点を移す企業が増えている。それは日本企業にとっても例外ではない。李前首相の急逝は、近い将来、中国に大きな損失を与える可能性がある。