そんな中吊りが掲載される可能性が、その時点では90%くらいありました(一方、こんな中吊りが出れば世間の注目を浴び、余計に雑誌が売れるだけなのに、という思いもありましたが……)。

 しかし、週刊文春には有能な2人の弁護士がついてくれていました。彼らは、読売側の弁護士が所属する弁護士事務所が発行する本の中に「元暴力団は反社会的勢力である」と定義した文言を発見したのです。自分たちの事務所でそう定義しながら、弁護士が法廷で違う主張を行うことは、理屈が通りません。

 形勢は一気に逆転。異様な中吊りが掲載される事態も回避されました。それでも発売前日に読売のフロントが記者会見を開きました。文春の記事に対して「元暴力団であって反社会的勢力ではない。だから野球協約に反しない」という主張を繰り返し、原氏は当事者なのに会見に出席せず、文書を公開するだけの奇妙な会見でした。

 また、スポーツ紙やテレビ局は読売に近い論調で原氏を擁護していましたし、巨人軍を自ら辞めた清武英利元球団代表の怨恨によるリークであろうといった主張さえしました。そして、組織の最終決定者であるコミッショナーは静観したままでした。それどころか、巨人の渡邉恒雄・球団会長が「原くんは絶対に辞めさせないよ。辞めさせる理由がない。来季もやってもらう」などと擁護しました。

 差し止めが終わった後も裁判は続き、最高裁まで争って、結局読売側の訴えは退けられました。

ジャニーズと読売の裁判をめぐる
動きは似ていないか

 どうでしょうか。こうして見てくると、ジャニーズと読売の裁判をめぐる動きやその後の動向は、似ていると言えないでしょうか。裁判で事実が明るみに出ても、組織の影響力を背景に、関係者の処分もしなければ、再発防止策も曖昧なまま。記者会見を開いても当事者は出て来ず、彼らと関係の深いメディアも「だんまり」を決めこんでいたのです。

 もちろん、原氏は被害者という立場ではありますが、最高裁の判断で事実が確定した段階で、野球協約に抵触する部分については、野球界から何らかの処分を受けるべきでした。ジャニーズ裁判と同じく、球団が判決で認定された事実を無視したことが、その後の組織に負の影響を残したと言わざるを得ません。