写真:東京地裁写真はイメージです Photo:PIXTA

両親に対する自殺幇(ほう)助の罪に問われた歌舞伎俳優市川猿之助(本名・喜熨斗=きのし=孝彦)被告(47)の判決公判が11月17日、東京地裁で開かれる。10月20日の初公判で猿之助被告は「間違いありません」と起訴内容を認め、検察側は「両親の自殺に寄与した度合いは極めて大きい」などと指摘し懲役3年を求刑。弁護側は執行猶予付きの判決を求め即日結審していた。司法担当記者の間では初公判の期日が決まり、執行猶予の線で固まったとみる向きは多かった。(事件ジャーナリスト 戸田一法)

最期まで息子の
舞台を案じた両親

 起訴状によると、猿之助被告は5月17日夜、父親で歌舞伎俳優の市川段四郎さん(当時76)と母親の喜熨斗延子さん(同75)の自殺を手助けするため、東京都目黒区の自宅で向精神薬を飲ませ、同日から翌日にかけて死亡させたとしている。

 検察側は冒頭陳述で猿之助被告の供述に基づき、週刊誌が自身の性加害やハラスメント疑惑を報じることを知り、両親に「歌舞伎の仕事はもうできない。死ぬしかない」などと自殺を考えていることを伝えたと指摘。

 延子さんから「周囲の人に対する責任はどうするのか」、段四郎さんからは「舞台はどうするのか」と尋ねられ、自殺の意思が固いとみた延子さんが「分かった。あなただけ逝かせるわけにはいかない」、段四郎さんは「うん」と応じ、両親が先に、猿之助被告が後を追うことを決めたと説明した。

 両親の自殺に使われたのは猿之助被告が2021年頃、不眠症で処方された向精神薬。20錠前後を砕いてコップに入れた水に溶かし、両親は17日午後10時頃までに飲んだ。猿之助被告は動かなくなった両親の頭にビニール袋をかぶせた後、仏壇に手を合わせたという。

 両親の体が冷たくなったことを確認した上で友人や親族に向けた遺書を書き、立って首にひもを掛けた、と状況を説明した。弁護側は「同意します」と述べ、事実関係について争わない姿勢を示した。