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学校の校庭が農場に!?
アメリカの食育「エディブル・スクールヤード」の可能性

瀧口範子 [ジャーナリスト]
【第236回】 2013年3月13日
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 学校の校庭の一部をオーガニック農場に変える「エディブル・スクールヤード」という運動が、アメリカ全土に急速に広がっている。

 エディブル・スクールヤードは、訳せば「食物のなる校庭」という意味。使っていない校庭を使って畑を耕し、そこにオーガニック農法で作物を育て、それを収穫する。その食材を使って食事を作り、みんなで一緒に食べることまで含めて、食べ物の由来や育て方を学ぼうという食育の一環だ。

 エディブル・スクールヤードがスタートしたのは、1995年のこと。場所はサンフランシスコ対岸の町、バークレーである。女性シェフで、バークレーで有名なレストラン「シェ・パニーズ」を経営するアリス・ウォーターズが、毎日通勤の際に通りかかる中学校の校庭が荒れ果てているのを残念に思い、地元新聞に告げた。それを読んだ同校の校長がウォーターズにコンタクトを取ったことから、エディブル・スクールヤードが始まった。

 ウォーターズと校長は、地元の人びとの協力も得ながら、ここを生徒のための農場とキッチンを統合した場所に作り替えていく。ウォーターズは、1970年代にシェ・パニーズを創設した当時から、オーガニックな地元の食材を用い、それを新鮮でおいしく、工夫のある料理としてテーブルに出すことで有名だ。食について確固とした信念を持つウォーターズのリードのもとで、この中学校の食育カリキュラムが少しずつ作られていったのだ。

 カリキュラムは畑作業とキッチンの作業に分かれ、生徒の年齢に合わせて組まれている。畑作業では、土を耕し、種や苗を植えるだけでなく、雑草取りをしたりコンポストを作ったりすることまで含まれる。このバークレーの中学校では、すでに1年を通して100種類にも及ぶ野菜、果物、ハーブ、花を栽培し、鶏も飼って卵を収穫している。

 収穫された食物は、今度はキッチンのカリキュラムの下で、料理して食べる。料理の方法もさることながら、みんなで味わいながら食べること、そして最後に後片付けするまでのすべてが、重要な食育のプロセスになっている。

未だ「食」への意識が低い
アメリカ人の食生活を改善できるか

 最近は食への関心が高まったとは言え、平均的アメリカ人の食に対する認識は決して高くない。高カロリーで栄養価のバランスの悪いファストフードは依然として人気だし、そうでなくともピザ、スパゲティー、ハンバーガーなど、決まりきった料理しか口にしない人々も多い。

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瀧口範子 [ジャーナリスト]

シリコンバレー在住。著書に『行動主義: レム・コールハース ドキュメント』『にほんの建築家: 伊東豊雄観察記』(共にTOTO出版)。7月に『なぜシリコンバレーではゴミを分別しないのか?世界一IQが高い町の「壁なし」思考習慣』(プレジデント)を刊行。


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