頭蓋骨に穴を開け電極を脳の深部へ…「男66歳、人生最後のトライ」の大手術を決心した理由Photo by Eijiro Hara

60歳で難病の診断を受けた筆者が闘病生活を赤裸々につづる連載『パーキンソン病と闘う』の第6回以降は、頭に穴を開けるDBS(脳深部刺激療法)手術とその効果について、前・中・後編に分けてお届けする。(ジャーナリスト 原 英次郎)

予定を1時間半もオーバー
頭に穴を開ける大手術で得たもの

 2023年10月30日、俺は今、病院のベッドの上にいる。DBS(脳深部刺激療法)を実施してちょうど1年たつので、その効果を測定するために検査入院しているのだ。昨日の午後7時からパーキンソン病の薬は飲んでいない。1年前とどう変わっているか、結果が楽しみだ。

 今回から3回に分けて、DBSという聞き慣れない名前の治療法をなぜ選んだか、手術前に何をするか。手術はどう行われるか、結果はどうだったか。そして術後の長い調整について記していきたい。

 俺の主治医である順天堂医院のH先生にDBS手術を受ける決意を告げたのは、昨年の5月。H先生は機が熟すのを待っていたかのように、即座に「うちのしっかりしたやつがいる科に回すよ」と言った。俺は、「DBSは判断能力を落とすといわれていますが、私の仕事にとって、それはとっても困るんです」と念を押すかのように問いかけた。「そのようになる可能性がある人は、DBSは受けられない。そのために多くの検査をするんだよ」とH先生。俺は腹を決めて、DBSの検査に臨むことにした。

 順天堂では19年から主にパーキンソン患者を対象にしたデバイス治療(DAT)に特化したDAT外来を立ち上げた。H先生がDATのO先生に俺を紹介する形をとる。

 普通はめったにしない手術なので、日記の代わりにと、友人たちにまめにLINEやメールを送っていた。それらを引用して1年前を振り返ってみたい。日付の入った文章は、当時のLINEやメールに加筆したものだ。

 まずは、なぜDBSを受けることにしたか。このDBSの物語は、「みなさま。ご無沙汰してます。わずか半年ばかりのうちに、私の病気に大きな変化がありました。正確には大きな変化が起ころうとしています」(22年7月5日)で始まる。